介護美容師とは、サロンに足を運ぶことが難しいお客様や介助を要するお客様に対して美容施術を行う美容師です。
訪問美容師や福祉美容師とも呼ばれ、少子高齢化が進む日本において近年ますます需要が高まっています。
企業やサロンに所属する場合でも、個人で開業して個別依頼を受ける場合でも、提供するサービスは洗髪・カット・ヘアカラー・パーマといった通常の美容師のサービスと同じです。
しかし、これらのスキルやノウハウに加えて高齢者や要介護者に関する知識や対応方法も知っておかなければなりません。
そこで本記事では、介護美容師を目指すにあたって取得しておくべき資格をご紹介します。
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介護美容師として働くために必須の資格
介護美容師として働くなら『美容師免許』が必須です。
厚生労働省が定める美容師養成施設で2年間、通信講座の場合は3年間のカリキュラムを受講し、美容師の国家試験(筆記および実技)に合格すれば取得できます。
民間資格のように独学で勉強して受験・取得することはできません。
美容師免許以外に必ず取得しなければならない資格はないものの、現実的には専門の知識やスキルがなければ対応が難しかったり、十分なサービスを提供できなかったりするでしょう。
また、介護美容師の求人においては美容師経験が求められることも多いです。
美容師免許の取得後は一般的なヘアサロンでアシスタントやスタイリストとして経験を積みながら、下記で紹介するような資格の勉強をして介護美容師を目指すことをおすすめします。
介護美容師が持っていると役立つ資格4選
高齢者や要介護者のお客様への施術では、通常のサロン勤務とは違う難しさがあります。
- ベッドに横たわったまま施術しないといけない
- 身体が曲がっているためバランスを崩すことがある
- 認知症で動いてしまってカットが難しい など
イレギュラーな状況にも対応できるように、介護美容師に関連する民間資格の取得を通じて知識・スキルを身に付けておくことが大切です。
認定福祉美容介護師®
認定福祉美容介護師®は、NPO法人 医療福祉情報実務能力協会が発行する民間資格です。
学ぶ内容は多いですが、介護・福祉の基礎知識から医学・薬学の知識まで幅広く身につけることができます。
病院環境衛生学と医科薬科学の2種類の通信講座(1次課程)と、スクーリングでの実習(2次課程)。
実習では消毒法や身体の清拭、寝たままの洗髪、ベッドメイキング、緊急時の応対方法など実践的な内容を学べます。
1次課程2二次課程はどちらを先に受講してもOKです。
両課程を修了後、1次課程の成績および2次課程の出席率をもとに合否が下されます。
認定福祉美容介護師資格の受験条件
次のうちいずれかの条件を満たしていれば申し込みが可能です。
- 美容師資格を有している
- 厚生労働省指定の美容師養成教育機関を卒業している
- 美容師試験受験履修単位取得見込み証明が可能である
受験の手引きを請求するか、協会のホームページで願書をダウンロードし、郵送で申し込みを行いましょう。
認定福祉美容介護師資格の取得方法
1次課程および2次課程の修了後3ヶ月以内に修了証と修了成績、出席証明の提出が必要です。
協会へ到着後14営業日以内に通知書面が送られてきます。
認定福祉美容介護師資格の受験料
資格認定審査料として10,800円を支払う必要があります。
受験の手引きに同封されている指定銀行振込用紙または郵便振替用紙で支払いましょう。ホームページで願書をダウンロードする場合、記載の銀行口座や郵便振替口座へ振り込みを行うか、現金書留を送付します。
福祉理美容士
福祉理美容士は、NPO法人 日本理美容福祉協会が発行する民間資格。
介護美容師として施術を提供するための基礎知識や基礎スキルに加え、正しい介助の方法やマナー、寝たきり状態の方への散髪や洗髪技術などを学べます。
仕事先を見つけるための営業ノウハウについても指導してもらえるそうです。
資格取得にあたり、自宅学習+2日間の講義(座学1日・実技講習1日/各日9時30分〜17時)の受講が必要です。
講習は全国各地で開催されており、比較的短期間で取得できるため、忙しい方や地方在住の方にもおすすめの資格だと言えるでしょう。
受講後は実際の施術で活用できる道具の優先販売や紹介といった特典も用意されています。
福祉理美容士資格の受験条件
- 理容師または美容師の資格を有していること
受講料を入金すると、協会からテキスト・問題集・解答用紙が届きます。
教材を使用して自宅学習を進め、レポート提出や次の講義へと進みましょう。
福祉理美容士資格の取得方法
まずは自宅学習を行い、講義の受講時に自宅学習に関するレポートを提出します。
79点以上を取得すれば合格、78点以下の場合は再提出が求められます。
加えて、2日間の講義後にそれぞれの感想レポートを作成・提出し、すべてのカリキュラムを修了すると修了証が発行されます。
福祉理美容士資格の受験料
教材費や講習費をすべて含めて27,000円です。
手続き完了後の受講会場の変更は原則できませんが、どうしても必要な場合は変更料2,000円+郵送費が追加で発生します。
修了証のほか、任意で顔写真付きの資格認定カードを発行することも可能です。
その場合、送料込みで作成料3,000円がかかります。
訪問福祉理美容師
訪問福祉理美容師は、一般社団法人 日本訪問福祉理美容協会(JVBWA)が発行する民間資格です。
6時間の講義で訪問美容の基礎やサービス提供のコツ、理美容道具の取り扱い方、消毒・感染症対策、高齢者や障がいのある方とのコミュニケーション方法などを学べます。
また、ベッドの上でカットやカラーなどの施術を行う方法、ベッドから車椅子への移乗方法など現場で役立つ内容も習得可能です。
訪問福祉理美容師資格の受験条件
次のうちいずれかの条件を満たしていれば申し込みが可能です。
- 理容師または美容師の資格を有している
- 厚生労働省指定の美容師養成教育機関を卒業している
- 美容師・理容師試験受験履修単位取得見込み証明が可能である
受講予約フォームから申し込みを行い、受講料を支払って受講に進みましょう。
訪問福祉理美容師資格の取得方法
協会が行う講義(10時〜16時/うち休憩1時間)を受講すると認定証が発行されます。試験やレポート提出などはなく、取得しやすい資格だと言えるでしょう。
講義会場は東京・大阪・京都・福岡・神戸・仙台など。
開催日程は不定期で、直近の開催情報はホームページから確認および申し込みが可能です。
訪問福祉理美容師資格の受験料
受講料は25,000円です。
受講予約完了後1週間以内に協会からのメールで知らされる振込口座へ、納付期限までに振り込みましょう。
ヘアメイクセラピスト
ヘアメイクセラピストは、一般社団法人 日本訪問理美容推進協会(JVPA)が発行している民間資格です。
介護の知識や介護美容師に必要な道具・備品の知識に加え、営業スキルも身に付きます。
指定のテキストで事前学習を行い、講習会場で1日を通して研修(座学・実技)を受けます。
現場や状況に合わせた器具の選び方、要介護者へのカット、ベッドに寝たままでのシャンプーなど実際の訪問現場を想定したカリキュラムが用意されています。
特徴的なのは、資格取得後に独立支援やフォロー研修、コンサルティングや営業促進ツールなどの手厚いサポートがある点。
介護美容師を目指している現役の美容師さんはもちろん、出産や育児などさまざまな理由で一度現場を退いていた休眠美容師さんのスキルアップにもおすすめの資格です。
【関連】美容師は産休・育休を取れる?休業中にもらえるお金や取得方法、準備などを解説
ヘアメイクセラピスト資格の受験条件
- 理容師または美容師の資格を有していること
ホームページの申し込みフォームより必要事項を入力・送信し、講座費用を入金すると事前学習教材およびペーパーテストが自宅に届きます。
ヘアメイクセラピスト資格の取得方法
事前に自宅学習を済ませ、教科書と解答済みのペーパーテストを持って講座に参加します。受講後、ヘアメイクセラピスト資格認定証が発行される仕組みです。
ペーパーテストの合格点は特に定められていません。
講座は1日のみで、10時〜16時45分(うち休憩1時間)。
東京・宮城・静岡・大阪・福岡・沖縄など全国各地で開催されています。
会場へ足を運べない場合はオンライン講座を受講してレポート提出を行えば、レポートの審査後に認定証が郵送されます。
ヘアメイクセラピスト資格の受験料
受験料は25,000円です。
介護美容師向けの介護・福祉系の資格3選
ここまでは美容師に関連する民間資格を紹介してきました。
介護美容師は美容サービスを提供する仕事であり、お客様の日々の生活を介助するわけではありません。
介護や福祉に関連する民間資格の取得義務はないものの、あるに越したことはないでしょう。
さらなるスキルアップを目指される場合は、以下で紹介する資格の取得も検討してみてはいかがでしょうか。
介護職員初任者研修
介護における入門的な資格といえば、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)です。
資格取得に向けて受講しなければならないカリキュラムは合計130時間。
介護の基本やコミュニケーション技術、老化や認知症、障がいについてなど介護職員に必要な知識を網羅的に学習できます。
各都道府県で複数の福祉系事業者が講座を開いているため、居住地を問わず受講しやすいです。
介護職向けの資格なので難易度は高いですが、取得しておけば介護知識を有した状態でスムーズに美容施術を提供できますよ。
介護職員初任者研修資格の受験条件
特になし
介護職員初任者研修資格の取得方法
厚生労働省の指針に基づいて各都道府県が定めている指定の養成機関でカリキュラムを受講し、筆記試験に合格すると修了証を取得できます。
通学あるいは通信で学習でき、任意で実技研修も受けることが可能です。
受講〜取得までの期間は受講方法によって異なりますが、最短1ヶ月が目安。
試験は100点満点中の70点くらいが合格ラインとされており、合格点を下回った場合でも追試制度が用意されています。
カリキュラムの内容を理解できていれば難易度はそこまで高くないようです。
介護職員初任者研修資格の受験料
地域やスクールによって金額が異なります。
相場は5万円〜10万円です。
認知症介助士
認知症介助士は、公益財団法人 日本ケアフィット共育機構が発行する民間資格です。
認知症に関する知識や、職場・家庭内での認知症の方への接し方、環境づくりなどを学べます。
お客様に認知症の症状がみられる場合でも、この資格を取得していれば意思疎通やサービス提供がスムーズになるでしょう。
介護美容師としてぜひ取得しておきたい資格です。
認知症介助士資格の受験条件
特になし
認知症介助士資格の取得方法
自宅学習を行い、全30問・40分間の検定試験を受けて合格すれば後日認定状が届きます。
合格点は30点満点中21点以上です。
合格率は9割以上となっており、比較的取得しやすい試験だと言えるでしょう。
試験は東京・大阪にある財団事務局のほか、CBTセンターや自宅での受験も可能です。
インストラクターが講義やディスカッションなどを行うセミナーを受ける場合は、同日セミナー会場での受験となります。
認知症介助士資格の受験料
検定料は3,300円です。
セミナーを受講して同日に資格試験を受ける場合は、セミナー受講料16,500円+テキスト代3,300円がかかります。
任意で検定試験対策問題集を購入することも可能です。
カードタイプの認定証を発行する場合は別途2,200円が必要となります。
認知症サポーター
認知症サポーターは正式な資格ではありませんが、講座を通して認知症の正しい知識と理解、適切な対応方法などを身につけられる制度です。
全国の自治体や職域団体などで開催される1時間〜1時間半ほどの養成講座を受講すると、認知症サポーターカードを取得できます。
受講料は原則無料です。
まとめ
介護美容師は一般的な美容師と違い、お客様の自宅・介護施設・病院などに訪問して美容施術を提供します。
必ず取得しなければならない資格は美容師免許のみです。
しかし、サロン勤務以上のスキルや配慮が求められるため、関連する資格を取得しておくとより働きやすくなるでしょう。
現在は通常の美容師として働かれている方も、将来的な働き方の幅を広げるために介護美容師としてのスキルを磨いておくことをおすすめします。
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