外国人は日本の美容室で働ける?働く方法や資格、外国人美容師育成事業について解説

グローバル化が進む昨今、美容業界も例外ではありません。
日本から海外へ飛び出して活躍する日本人美容師が増えています。

一方で、世界からも日本の繊細な技術が注目されていることをご存知ですか?
「日本国内の美容室で働きたい・学びたい」と考えている外国人の方も存在します。

しかし、外国国籍の方が日本で美容師として働くためにはさまざまな制約があるのも事実。
美容師免許を取得するだけでは勤務できません。

本記事では、外国人美容師が日本で働くうえで求められる資格や取るべき手順、就職を後押しする「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」の概要などを解説します。
日本の美容サロンで働きたい外国人美容師の方や、外国人美容師の雇用を検討しているサロンオーナーの方はぜひご覧ください。

 

外国人が日本で美容師として働くために必要な資格

日本国内で美容師として働く場合、必ず美容師免許を取得しなければなりませんが、外国国籍の方はさらに在留資格が必要となります。

 

1.美容師免許

日本で美容師として働くためには、国家資格である美容師免許の取得が必須です。
厚生労働大臣または都道府県知事が指定している美容師養成施設(美容専門学校など)に入学し、2年以上(通信課程の場合は3年以上)の課程を修了したうえで、美容師国家試験に合格すれば免許を取得できます。

受験資格として国籍に関する規定は明記されていないため、外国人でも受験可能です。

ただし、外国人留学生の受け入れ態勢が整っている美容専門学校を選択して2年以上通学(あるいは3年以上通信学習)する必要があり、日本語の理解力も求められるため、取得難易度は日本国籍の方よりも上がってしまうと言えるでしょう。
留学ビザの取得も必要です。

 

2.在留資格(ビザ)

外国国籍の方が日本に90日以上長期滞在する場合や、日本国内で報酬を得る活動を行う場合には在留資格(ビザ)の取得が必要です。

ビザにはいくつかの種類があり、それぞれ就ける職種や勤務時間に制限が設けられています。
中でも美容師に関連するビザは主に次の種類です。

身分・地位に基づく在留資格(身分系ビザ)

「身分・地位に基づく在留資格」には活動制限がありません。
次の4種類に該当する方は、在留資格が維持される限り、美容師として日本の美容室で日本人と同じように勤務が可能です。

  • 永住者:法務大臣から永住許可を受けた者
  • 日本人の配偶者等:日本人の配偶者、実子、特別養子
  • 永住者の配偶者等:永住者・特別永住者の配偶者、日本で出生し引き続き在留している実子
  • 定住者:日系3世(日本から海外に移住した方の孫)、外国人配偶者の連れ子等

参照:在留資格一覧表|出入国在留管理庁

就労が認められる在留資格(就労ビザ)

身分系ビザを所持していない外国人が日本に滞在して働く場合は、就労資格(就労ビザ)が必要です。
取得後に行う仕事の具体的な業務内容や職種を申請し、承認されれば、在留期間中は該当する仕事に従事できます。

就労ビザは大別すると19種類あり、外交や教授、医療や教育などの職業が挙げられます。
しかし、美容師に該当する就労資格は存在しません。

外国人美容師が日本で働くためには先ほどの身分系ビザを取得するしかありませんでしたが、取得難易度が高いため、「美容師免許を取得しても働けない」という問題が発生していました。
この問題を解決するために、日本政府は2021年に「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」を開始しています(後述)。

留学ビザや家族滞在ビザ

日本の学校に通うための「留学ビザ」や、在留外国人の配偶者や子どもに認められる「家族滞在ビザ」があれば、アルバイトやパートとして日本の美容室で勤務できます。

美容師資格が必要な施術(カットやカラーなど)は行えませんが、受付や清掃などの仕事内容であればOKです。
また、認められている労働時間は原則週に28時間以内という就労制限が設けられている点には注意しましょう。

 

2021年にスタートした外国人美容師育成事業とは

「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」とは、日本の美容師養成施設を卒業して美容師免許を取得した外国人留学生に対し、一定の条件のもとで美容師として就労・在留することを認める制度です。

日本の美容製品の輸出促進やインバウンド需要への対応、日本の美容に関する技術・文化を発信する担い手の育成などを目的として、2021年に開始。
この事業により、日本での就労を希望する外国人美容師が働きやすくなりました。

ただし、特例措置であるため、2023年9月現在は在留資格の期限は最大5年間です。
また、ほかにもいくつかの制約が設けられていますが、徐々に環境が整備されていくことが期待されています。

 

利用条件

外国人美容師が「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」を利用して働くためには、定められた条件を満たし、就労許可を得る必要があります。
利用条件は以下の6点です。

①美容師育成施設で知識・技能を習得している
厚生労働大臣または都道府県知事が指定している専門学校などで、美容師として働くうえで求められるノウハウ・スキルを身につけていることを意味します。

②成績優秀・素行善良である
上記の学校で優秀な成績を修め、素行が良い生徒であることも求められます。

③美容師免許を取得しているor取得見込みがある

④日本語能力試験でN2以上のレベルに合格している
日本の美容室で働くために、日常的な場面で使われる日本語の理解だけでなく、より幅広い場面で使われる日本語もある程度理解できなければなりません。

⑤満18歳以上

⑥日本式の美容に関する技術・文化を世界へ発信する意思を持っている
「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」の理念を理解して、上記を積極的に世界へ発信する人物が求められます。

 

働ける場所

「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」において、外国人美容師は日本全国どのサロンでも働けるわけではありません。
特定地域内の、関係自治体に認可されたサロンでのみ勤務できます。

対象エリアは東京のみ

事業名のとおり、この事業を利用して就労できる地域は限られています。
国家戦略特区にあるサロンのみが認可される仕組みです。

国家戦略特区とは、地域・分野を限定して大胆な規制・制度の緩和や税制面での優遇を行う制度を指します。
美容師の就労が認められているエリアは、2022年10月1日から認可された東京都内のみとなっています(2023年9月現在)。
今後は他のエリアにも拡大していく予定です。

勤務先は認定されたサロンのみ

認可されたエリアの中で、次の条件を満たし育成機関として認められたサロンでのみ勤務できます。

  • 育成計画を実施できる美容所を、事業実施区域に有している
  • 管理美容師を配置している
  • 健全かつ安定的な経営状況である
  • 労働及び社会保険に関する法律の規定を遵守している
  • 禁錮以上もしくは各種罰金の刑に処せられ、その執行を終えた日から起算して5年を経過しない者に該当しない

参照:外国人美容師育成事業 – 内閣府

サロン側が採用する外国人美容師の育成計画を作成・申請し、認定されれば雇用を開始できます。
勤務開始後も育成状況の報告や関係自治体との連携が必要です。
なお、1つのサロンあたりの外国人美容師の受け入れ人数は3名が上限となっています。

働けるサロン一覧は以下のサイトをご覧ください。

参考:育成機関一覧 – 一般社団法人外国人美容師監理実施機関

 

業務内容

外国人美容師が「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」を利用して働く場合、次の業務のみが実施可能です。
①〜⑧は必須で、⑨〜⑱は任意(選択)です。

①シャンプー
②カット
③トリートメント
④ブロー
⑤セット・アイロン
⑥カラー
⑦パーマ・縮毛矯正
⑧ヘッドスパ
⑨まつ毛エクステ
⑩ネイル
⑪エステティック
⑫着物の着付け
⑬メイク
⑭洋装ブライダル
⑮出張美容
⑯サロンの経営管理に関すること
⑰その他関係自治体が必要と認める業務
⑱その他付随業務

美容師として活躍するために必要な仕事内容がひと通り含まれています。
実践的な知識やスキルを身につける必要があるため、「シャンプーだけ」「カットだけ」のような働き方は認められていません。

また、上記に含まれていない業務を行うと違法となります。
掃除やチラシ配りなどの雑務を主な業務として行うことはNGですが、不随業務として行う場合はOKです。

給料

外国人美容師がもらえるお給料の金額は、日本人美容師が受ける報酬と同等額以上であることが定められています。
事業名に「育成」という言葉が含まれているものの、給料が安く設定されることはありませんので安心してください。

働いているサロン(育成期間)や監理実施機関から、保証金や違約金などを求められることもありません。

 

外国人美容師が日本のサロンで働くための手順

身分系ビザがある場合の手順は次のとおりです。
①美容師養成施設に入学する
②美容師国家試験を受験・合格する
③任意のサロンから採用される
④外国人美容師として働く

一方、身分系ビザを所持しておらず、「外国人美容師育成事業」を利用して働く場合の手順は次のとおりです。
①留学ビザを取得する
②美容師養成施設に入学する
③事業の利用に必要な要件を満たす
④育成機関に認定されているサロンから採用される
⑤育成計画の申請を行い、認可を得る(サロン側が行う)
⑥美容師国家試験を受験・合格する
⑦特定活動ビザに変更する
⑧外国人美容師として働く

「外国人美容師育成事業」を利用して働く方は、入国時に取得した「留学ビザ」から、「特定活動ビザ」に切り替える必要があります。
勤務予定のサロンがある地域を管轄している入管(地方出入国在留管理官署)で、在留資格変更許可を申請してください。
取得後の更新も忘れずに行いましょう。

スムーズに申請が進めば、美容専門学校の卒業と同時に外国人美容師としての勤務をスタートさせることが可能です。

 

まとめ

外国国籍の方が日本で美容師として働くことは容易ではありませんが、「国家戦略特区域外国人美容師育成事業」がスタートしてからは以前よりも働きやすくなりました。
今はまだ東京都内の一部のサロンに限られていますが、今後の拡大に期待したいところです。
コロナの流行が落ち着いて観光客が増えてきたこともあり、英語を話せる外国人美容師はますます重宝されるようになるでしょう。

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