人気職業のひとつである美容師ですが、離職率は1年目で約50%、3年目で約80%、10年目で約92%です(厚生労働省 令和元年 雇用動向調査より)。
独立やキャリアアップなど前向きな理由で退職・転職をする人も多いですが、他の業界に比べて高い離職率であると言えるでしょう。
本記事では、当メディアを運営する美容業界求人サイト『キレイビズ』が、美容師の方からよく聞くサロンを辞める理由や乗り越え方、面接で退職理由や転職理由を聞かれた時の答え方などを解説します。
美容師がサロンを辞める10の理由
美容師の方がサロンを辞める理由は人それぞれですが、以下の10個のいずれかに当てはまることが多いようです。
- 人間関係が悪い
- 条件が違う
- レッスンしてくれない
- 拘束時間が長い
- 休みが休みじゃない
- デビューまでの道のりが長い・辛い
- 給料が上がらない
- 入客できない
- スタイリストとアシスタントの間に壁がある
- 体調が悪化
人間関係が悪い
どんな業種でも職場の人間関係に悩んでいる方は少なくありません。
美容師の場合は毎日顔を合わせるスタッフが限られている上、少人数でサロンを運営しているため、特に人間関係が大切です。
オーナーや店長、先輩スタッフなど、誰か1人と関係が悪くなってしまうだけで、相当なストレスになります。
美容師は、体力的にも精神的にも疲労が溜まりやすい職業ですが、一番多い離職原因は精神的なもので、主に人間関係なのではないでしょうか。
条件が違う
給料や休日などの労働条件が、働く前に認識していた内容と違うサロンも中にはあるようです。
例
・条件に給料17万円と記載されていたのにも関わらず、シャンプーの試験に合格するまでの期間は15万円になる
・週休2日と聞いていたが、はじめの3ヶ月は週に1日しか休みがない など
実際に働いてからしかわからないような、求人内容とのギャップがあることは珍しくありません。
特に新卒アシスタントさんは、条件の違いに戸惑うことがよくあります。
最初にサロンからの説明があり、納得の上なら良いですが、説明を十分にしないサロンもあるため注意が必要です。
レッスンしてくれない
若い美容師がキャリアアップするために、レッスンや研修制度は必要不可欠です。
しかし、サロンによってはスキルを磨く時間を十分に取れないところや制度が用意されていないところも多く見られます。
成長できるカリキュラムが整っていないサロンだと、いつまでたってもスタイリストになれない可能性もあるでしょう。
また、スタイリストデビュー後は、シャンプーやブローだけでなく、ミスをしたら取り返しのつかないカットなどの施術も担当することになります。
レッスンや指導が少ないサロンの場合は、技術不足や不適切な接客でお客様からのクレームにつながってしまうことも。
技術の向上はイキイキと自信を持って働き続ける上で大切なのです。
拘束時間が長い
サロンにもよりますが、美容師は1日の拘束時間が長い職業です。
サロンの営業時間後にレッスンを行うため、どうしても就労時間が長くなってしまいます。
レッスン以外にも、その日の反省やお客様1人1人のカルテ作りなど、やることはたくさんあります。
ゆえに、帰宅時間が22時や23時になることはよくあることです。
美容師が『激務』と言われる理由のひとつが拘束時間の長さだと言えるでしょう。
休みが休みじゃない
カラー剤などのメーカー研修やスキルアップ研修は、サロンの定休日に行くことが多いです。
そのため、休日を返上して研修に参加することになるでしょう。
他にも、モデルレッスンが始まるとモデルハントが必要になってきます。
営業時間外や休日に、SNSでダイレクトメッセージを送ったり、駅前などで声をかけたりしなければなりません。
勤務時間以外の本来休みである時間に仕事に関することを無給で行わなければならず、休みなのに休みでない状況に悩む美容師も多いようです。
デビューまでの道のりが長い・辛い
アシスタントがスタイリストデビューするまでの平均勤務年数は、およそ3年と言われています。
しかし、この3年間が美容師として最も苦労すると言われており、3年以内に辞めてしまう人がとても多いです。
理由として、いつになったらお客様の髪が切れるようになるのかゴールが見えないまま、技術を練習する日々が夜遅くまで毎日続いてしまうことが挙げられます。
なかなかデビューできない、期間が決まっていないなどの場合は、モチベーションが続かず、離職に繋がってしまうようです。
給料が上がらない
アシスタント時代の給料は、平均年収170万円~220万円ほど、月収給料は14万円〜18万円ほどが相場となっており、かなり低い水準です。
ウィッグやシザー、コームなどの練習材料費、技術を学ぶ講習費やテキスト代などもかかるため、はじめは生活するのがやっとくらいのお金しか手元に残りません。
また、スタイリストデビューをしても急激に給料が上がることは少ないです。
ただ単純に給料が低いことが辞める理由になっているのではなく、拘束時間に対して給料が割に合わないことが退職理由となっているのではないでしょうか。
他にも、基本給の低さだけでなく、育児手当や住宅手当などの福利厚生が十分に支給されていなければ、生活と仕事との両立も難しくなるでしょう。
昇給のタイミングが明確化されているなどステップアップできる環境や福利厚生制度が整ったサロンを選ぶことをおすすめします。
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入客できない
現場で働く美容師は、入客ができないと売り上げが上がらず、給料も上がりません。
個人店や顧客の少ないサロンでは特に、サロンへ来店される方はオーナーの顧客がほとんどというケースが多いです。
修行を積んでスタイリストになっても、オーナーの顧客へのアシスタント業務ばかりで施術ができない状況に陥ってしまいます。
実際にカットをしないと、給料が上がらないだけでなく、技術もなかなか向上しません。
スタイリストとアシスタントの間に壁がある
働きやすいサロンはチームワークが抜群です。
スタイリスト・アシスタント関係なく、掃除や雑務をこなしています。
一方でスタイリストとアシスタントの間に壁があるサロンの場合、アシスタントがお店が忙しくないときに掃除をし、スタイリストは携帯を触って何もしないなどの状況が発生します。
お客様にも人間関係が良好でない様子は必ず伝わり、お店の雰囲気も悪くなるでしょう。
チームワークが上手くいっていない職場は、人間関係の悪化にもつながり、退職理由のひとつとなってしまうようです。
体調が悪化
先述のとおり人間関係や激務により、心のストレスだけでなく、体にも悪影響が出ることも。
美容師特有の健康被害としては、薬剤などで手が荒れてボロボロになる、立ち仕事や中腰の状態が多いことから腰痛がひどくなるなどが挙げられます。
休みが少ないために十分な治療ができず、体調がどんどん悪化してしまうことも多いです。
美容師の退職理由ランキングTOP5
当サイトを運営する美容業界向け求人サイト『キレイビズ』の調査によると、美容師が辞める理由として多いのは以下の5つです。
1位 | 人間関係 | オーナーや先輩との関係性に対してが多い |
2位 | 給与面 | 稼げない、入客出来ない、がんばっても還元されない、そもそも基準が低い |
3位 | 休日休暇、勤務時間 | 勤務時間・拘束時間が長い、夜が遅くなる、土日祝休めない、休憩がちゃんと取れない、プライベートの時間がなくなる、有給が使えない、休みが少ない、連休が取れない |
4位 | 成長できない | 入客ができない、経験を積めない、レッスンが進まない・見てくれない、スタイリストデビューできない、自分がしたいトレンドのスタイルができない、若いお客さんに接することができない |
5位 | サロンのやり方・接客の仕方が合わない | 施術時間のかけ方、他店にヘルプに行かされる、掛け持ちが多すぎて一人一人のお客さんに時間をかけられない |
上記の中でも特に、人間関係を理由に辞める方が圧倒的に多いです。
美容師が辞めたいと思った時の対処法
ここまでで紹介したようなさまざまな理由で「今のサロンを辞めたい」「美容師を辞めたい」と思ったら、まずは次のようなことをしてみてはいかがでしょうか。
- 辞めたい理由とその解決方法を考える
- 解決方法をやってみて改善するか確認する
- サロン内の人や他サロンの美容師、家族や友人など周りの人に相談して意見を聞いてみる
- いくつかのサロンを見学して検討する
- 他のサロンや別業種の会社、働き方を視野に入れてみる
- 自分の理想の働き方やキャリアプランを見つめ直す
- 一旦休んでリフレッシュする
- 美容師として働いていて嬉しかったことや仕事のやりがいを思い返す
上記を踏まえてじっくりと検討し、「今の期間が辛いだけだからもう少し粘ろう」「一通りの技術を身につけるまでは頑張る」と前向きに思い直せるのであればいいですが、悩みの解決策が見つからない場合や退職意思が固い場合は、退職・転職を検討しましょう。
辞めたい理由が、人間関係や教育制度、給与や休日など勤務先のサロンに起因しているのであれば、別のサロンに転職することで改善される可能性が高いです。
美容師という職業自体に起因しているのであれば、別業種や別業界への転職も検討されることをおすすめします。
別のサロンへ転職する
現在働いているサロンの人間関係が悪化している場合や労働条件がひどい場合は、別のサロンへ転職し、新たな環境でイチから出直すことがよいでしょう。
また、今のサロンで正当に評価されていない、あるいは昇給・昇格の見込みがないなら、他サロンで腕試しをしてみてはいかがでしょうか。
キャリアアップできる可能性もあり、給与面での不満によるストレスからも解放されるかもしれません。
転職のポジティブな面にも目を向け、自分の理想とするライフプランや心身の健康に必要な決断をすることが大切です。
別業種や別業界に転職する
美容師という職業自体を辞めたい場合は、別業種・別業界の職業に転職する方法もあります。
美容師としての経験やスキルを活かすなら、アイリストやメイクアップアーティスト、ネイリストなど、同じ美容業界内での転職がおすすめです。
資格が必要でない職業もあり、美容業界での勤務経験者は初心者よりも優遇されるケースもあります。
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他にも、フォトスタジオや結婚式場のメイク係、マッサージ師やエステティシャンなども美容師の転職先として人気です。
美容師経験で培った美容知識やお客様とのコミュニケーションスキルが役に立つでしょう。
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美容業界ではない別業界への転職を希望する方は、未経験者歓迎の仕事や、事務や接客業などの資格不要の仕事を選ぶと採用されやすいです。
キャリアアップを目指してスキルを磨きたいなら、資格を取得したり、専門学校や通信教育で学んだりするとよいでしょう。
美容師の転職面接における退職理由の答え方
転職での面接時、採用担当者から前のサロンや美容師を辞めた理由、転職する理由を聞かれることがあります。
これは、応募者のモチベーションや人柄、仕事に対する考え方や責任感、入社後にすぐ辞めてしまわないかどうかなどを確かめるためです。
退職理由・転職理由の答え方のポイントは次のとおりです。
- 転職に至ったきっかけがネガティブな理由だとしてもポジティブに変換する(成長のためなど)
- 辞めたサロン・現サロンの悪口を言わない
- 面接先のサロンや企業で学びたいことや貢献できることを伝える
- 転職理由を志望動機や入社意欲につなげる
上記のポイントを押さえ、自信を持ってハキハキと伝えましょう。
まとめ
華やかに見える美容師という職業ですが、実際は肉体的にも精神的にもハードな仕事です。
そんな美容師の方が、向上心を持って生き生きと働くためには、サロンの環境がとても大切と言えます。
環境のいいサロンは、全体の雰囲気が明るい居心地の良いサロンになり、お客様もスタッフも自然と集まります。
自分にあったサロンで働くためには、実際に働いている方に話を聞いたり、美容業界に特化した求人サイトへ相談されることをおすすめします。
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業界事情や美容室の特徴を熟知した担当者がお話をうかがいますので、まずはお気軽にご相談下さいませ。