サロンの労務管理できていますか?美容室に必要な労務の基本知識を解説

サロンを経営するにあたってお客様へのサービスの拡大を図るために、人を雇用していくことは一般的な発想です。
サロンに関わらず組織には「人、物、金」があり、人については「労務管理」なくして適正な運営は成り立ちません。
今回は、意外と見落とされがちなサロンの『労務管理』にフォーカスをあて解説してまいります。

 

試用期間と各種社会保険制度

正社員として雇用する場合であっても適性などを判断する意味合いで試用期間を設けることは珍しくありません。
労務管理上の注意点として試用期間とは労働基準法に定めはありませんがあまりにも長期間定めてしまうと権利濫用と判断されます。また、試用期間中だけ雇用保険や社会保険に加入させないという判断は誤りです。

 

雇用保険は法人でなくても加入義務があります。

法人でなくても雇用保険は労働者を週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで雇用する場合は加入義務となります。
しかし、昼間学生は雇用保険の適用除外となります(夜間学生は適用除外とはなりません)。

雇用保険とは現在の職場を退職し、次の職場に就職するまでの間の求職活動期間中に失業保険(正式には基本手当)の給付を受けるための保険制度です。
他には育児休業期間中の収入保障が整備されています。

 

社会保険は法人の場合加入義務があります。

社会保険とは健康保険と厚生年金を総称し、法人の場合は労働者数の有無に関わりなく加入義務であり、法人でない場合、理容・美容業等のサービス業は常時5人以上の労働者がいる場合はサロンとして任意適用(強制加入ではない)となります。

例えば社会保険の適用対象のサロンに勤めている場合、有期雇用契約であっても概ね週30時間以上働く場合は個々の労働者も加入対象となります。
健康保険は病院にかかる場合や万が一働けなくなった場合に傷病手当金(非課税)が支給され、厚生年金は国民年金の上乗せとして原則65歳から終身にわたって老後の年金が支給されます。

 

労災保険は、1人でも雇用する場合は必要

労災保険は労働者を1人でも雇用する場合は設立させる必要があります。
ただし、雇用保険と労災保険は同居の親族を雇用する場合は原則として適用対象となりません。
対象となるケースは以下の限定的なケースですが、サロンの場合他の業種より該当する場合が多くあり、注意が必要です。

前提として同居の親族については、原則として労災保険法上の「労働者」には該当しませんが、同居の親族以外の労働者を常時雇用する場合は次の要件を満たす場合に限り、「労働者」として扱われます。

・業務を行うにあたり、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること
・就労実態が職場における他の労働者と同様であり賃金もこれに応じて支払われていること
・始業、終業時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の決定、計算および支払い方法、賃金締切および支払い時期などについて就業規則などにその管理方法が他の労働者と同様な場合

雇用保険上も同趣旨の考え方となります。
よって、試用期間であることのみをもって適用の可否を判断するということではありません。

 

労働時間

労働時間については労働基準法に定めがあり、端的には事業主の指揮命令下に置かれた時間と定義されます。
これは事業主からの明示的に指示された時間だけでなく黙示の指示により労働する時間も含まれます。

前提として「労働時間」に該当するか否かは労働契約書や就業規則の定めにより決まるものではなく、客観的に実態を鑑みて判断されます。
例えば事業主から明示的に指示をしていない場合であっても労働せざるを得ない状態等の有無から個別具体的に判断されるということです。

清掃や研修も労働時間になる場合がある。

サロンであれば顧客目線での「開店時間」前にサロン内の清掃を義務付けているような場合は労働時間となる場合があるということです。
この点に対するリスクとしては以下のようなケースです。

労働時間は18時間、1週間で40時間と定められています。
これを超えて働かせる場合には36協定(「サブロク協定」と呼称します。)を締結し、所轄労働基準監督署へ届け出ておかなければ違法となります(36協定については後述します)
すなわち、労働契約書上のみで労働時間を管理していた場合には残業代の未払いが蓄積している可能性があるということです。
尚、残業代は双方が「支払いはなし」と合意を締結していた場合であっても、その合意は無効と解されます。

36協定とは?

36協定とは時間外、休日労働に関する協定届のことを言います。
あくまで免罰的効果(単に罰則を免れる効果を持つにすぎない)を有するに過ぎず、就業規則などにどのような場合に時間外労働を命じるなどとして、根拠規定を整備しておくことで労働者に対して時間外労働を命じる民事的な根拠となるため、事前に定めておくことが一般的です。
就業規則については、常時使用する労働者数が10人以上となった場合は所轄労働基準監督署へ届け出なければなりません。

また、残業代を計算するにあたり、最低賃金法もチェックしておく必要があります。
最低賃金は都道府県ごとに定められており、毎年10月頃に改正されます。
近年は上昇傾向が続いており、最低賃金を下回ったままの契約状態で実際に給与を支払ってしまうと最低賃金法違反となることから注意が必要です。

 

有給休暇

業種や企業規模に関わりなく6か月継続勤務し8割以上の出勤率を満たす場合は10日(出勤日数が4日以下などの場合は10日より少ない日数の場合あり)付与されます。
201941日以後は改正労働基準法により有給休暇が年10日以上付与される場合、5日は消化することが義務化されました。
サロンの場合は土日も営業することが一般的でありシフトを組んで労務管理することが多いでしょう。
よって、計画的に有給休暇が消化できているか否かを管理しておく必要があります。

なお、5日付与対象者に5日未満の有給休暇しか付与できなかった場合には罰則(30万円以下の罰金)も設けられていることから注意が必要です。
成人式前などの繁忙期には複数の労働者に有給休暇を行使されてしまうとサロンが運営できないなどの問題も想定されます。
そのような場合は「時季変更権」として指定された時期を変更できる権利が認められています。

退職

美容師の特徴として、多職種と比べて労働者自身が独立する傾向が高く、雇用の流動化が高い職種となっております。
すなわち、「退職」についても最低限の知識を備えておく必要があります。
民法の規定では最低でも2週間前までに退職の意思表示をしなければならないとなっていますが、後任への引継ぎなどを考慮すると2週間では間に合わないというケースもあるでしょう。

サロンとしての定めてとして例えば1か月前までに上司に伝えるとしているケースが一般的です。

重要な点として退職願などの書面を通じて双方が退職日の認識に齟齬が生じにくい形でサロン内の規定を設けておくことが適切です。
口頭のみで退職処理を行ってしまうと誤解が生まれることがあり、また、退職日のズレは雇用保険などの手続きでも問題(例えば退職者が受けとれるはずであった給付が受け取れなかった)が生じることがあります。

 

まとめ

サロンの労務管理は一般的な業種と異なり、労働者のシフト管理、入退職が多いこと、労働時間が曖昧になりやすいなどの問題が多く想定されます。
一度に全てを解決することは困難ですが、基軸となる考え方を知っておかなければ何がイレギュラーケースかさえも判断がつかず、問題が肥大化してしまったケースもあります。

また、労働基準法は多くが事業主に対して義務を科す法律です。
よって、社内ルールを設けることで労働者に対するルールも明確に整備することができます。
例えば残業を許可制とすることでタイムリーにどの程度の残業が生じているかの把握もしやすくなります。

そして、最も重要な点としてそれぞれのサロンとして独自の問題もあることから、それぞれのサロンとしての労務管理体制を作り上げていくという姿勢が重要になるでしょう。

ここでは、一般的な知識として基本的な労務管理について紹介しましたが、何か不明な点があれば他サロンで取り入れている制度についてなど、ご相談に乗れることも多数ございますので、お気軽にお問い合わせください。

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