美容師向けカウンセリングマニュアル!接客の手順や伝え方のポイントなどを解説

美容師はカットやカラー、パーマなどの技術を提供してお客様が求めるヘアスタイルを叶えるやりがいのある仕事です。
理想のヘアスタイルを作るうえで、お客様のお悩みやニーズを聞き出す「カウンセリング」は欠かせません。

カウンセリングの質によって、ヘアスタイルの仕上がりだけでなくお客様の満足度も左右されます。
満足度を高めることができれば、顧客単価やリピート率も自ずと上がっていくでしょう。
反対にカウンセリングを怠ると、認識のズレが生じて不満やクレームにつながる恐れもあります。

本記事では、美容師にとってカウンセリングが重要な理由や一般的な流れ、上手なカウンセリングのコツなどを解説します。

 

なぜ美容室のカウンセリングが大切?

美容師がお客様の望むヘアスタイルを作り上げるためには、なりたいイメージを的確に把握して提案する「カウンセリング力」とそれを具現化する「技術力」の両方が必要です。

カウンセリングの目的はゴール(施術後の仕上がり)を共有すること。
ご希望やお悩みを聞き出し、お客様自身がまだ言語化できていない要望までもを拾い、双方ですり合わせながら形にしていく必要があります。

共有が不十分だったり、美容師が独断でお客様のヘアスタイルを決めてしまうと、「理想としていた髪型と違う」「スタイリングが好みじゃない」と不満につながり、トラブルの原因になることも。
「リピートにつながらない」「サロンを変えられてしまう」など失客に悩んでいる美容師さんは、カウンセリングや接客を見直してみましょう。

 

美容室のカウンセリングの流れ

カウンセリングはどのような流れで進め、お客様から何を聞き出せば良いのでしょうか。
手順に沿ってカウンセリングの内容とポイントを解説します。

 

0.挨拶・自己紹介

初めてご来店されたお客様に対しては、カウンセリングの前に自己紹介を行います。

わたしたち人間は、最初に受けた印象がそのあと抱くイメージや感情に強く影響する傾向があります(初頭効果)。
第一印象がよければカウンセリングがスムーズに進み、施術や接客に対する満足度も高まるでしょう。

どんなに忙しくても挨拶を適当に済ませるのはNG。
「はじめまして、本日担当させていただく◯◯です。よろしくお願いします!」の最初の言葉を、笑顔で目を見て、ハキハキと伝えましょう。

関連記事:美容師が名刺に入れるべき内容とは?渡し方やメリット、作成時のポイントも解説!

 

1.髪質や状態の確認&お悩みのヒアリング

お客様はひとりひとり髪質や状態が異なり、さまざまな悩みを抱えています。
そのため、「こんな髪型になりたい」というゼロをプラスにするポジティブな要望だけでなく、「このお悩みを解決したい」というマイナスをゼロにするネガティブな要望を叶えるために美容室へと来店されます。

まずはお客様が普段感じている髪のお悩みやヘアケア・ヘアセットでの困りごとをヒアリングしましょう。
例えばクセが強い、パサつきがある、乾燥している、まとまらない、片方だけハネる、ダメージがあるなど。

お客様のお悩みをヒアリングする際は言葉選びに要注意!
「たしかに傷んでますね」「トリートメント不足です」のような誤った共感や上から目線のアドバイスはNGです。
「わたしもパサつきやすいタイプなので、そのお悩みよく分かります」のような共感や、「ホームケアを頑張ってくださってるんですね」「毛が細くて繊細なぶんサラサラで羨ましいです」のような褒め言葉を添えて、信頼関係を築いていく必要があります。

また、髪のお悩みに加えて、今のヘアスタイルや前のサロンに対する不満も聞き出せるとよいでしょう。
さりげなく「今の髪の状態でどこか気になるところはありますか?」のようにヒアリングしてみてください。

 

2.仕上がりイメージのヒアリング

ネガティブな要望を聞き出したら、次はポジティブな要望をヒアリングしていきます。
この段階でのお客様は「ロングからボブにしたい」「髪色をもう少し明るくしたい」のような、まだざっくりとしたイメージしか浮かんでいない場合が多いです。

・「◯cmカットする」「前下がりボブ」など具体的な言葉にする
・ヘアカタログやSNSで参考写真を探して視覚的に共有する
・業界用語や難しい言葉を使わずに説明する

上記3つのポイントを押さえ、希望のデザインを確認しましょう。

お客様が頭の中で描いているイメージを言葉で正確に美容師へ伝えることは難しいです。
また、「フェミニンな雰囲気」「流行ってるボブスタイル」のような抽象的な表現は人によって感覚が異なります。
イメージの相違を防ぐためにも、なんとなくで施術を進めるのではなく、ここでしっかりと認識をすり合わせておく必要があります。

 

3.ホームケアやセット方法のヒアリング

その日行う施術を提案する前に、お客様が普段自宅でどのように髪の毛を扱っているのか確認しておく必要があります。

・使っているヘアケアアイテム
・ヘアケアやセットにかけられる時間
・セットに使用しているアイテム(コテやワックスなど)

美容室での仕上がりを気に入ってもらえたとしても、自宅で同じスタイリングを再現できないと満足度が下がってしまいます。
お客様の生活スタイルや性格に合わせて、提案するスタイルや施術を柔軟に調整していきましょう。

 

4.施術の提案・確認

ヒアリングが完了したら、いよいよ提供する施術やスタイルを提案します。
お客様の髪を実際に触り、鏡を見ていただきながら長さや量、シルエットやカラーなどをどのように変えていくかを伝えましょう。
前だけでなくサイドやバックの状態を含めてデザインとメニュー内容を具体的に伝え、お客様の了承を得てください。

最初にお客様からヒアリングした髪型を叶えることが難しい場合は、「今の長さだと難しい」「毎日のセットに時間がかかってしまう」など理由を伝える必要があります。
理想の髪型のどこを気に入っているのか?どういうイメージになりたいのか?を深掘りして、お客様の理想に近づけるような別のスタイルを提案します。
お悩みの解消やヘアセットの簡単さなどメリットを合わせて提示してあげると、納得してもらいやすくなります。

 

5.所要時間の共有

施術内容に納得してもらえたら、施術完了までにどのくらい時間がかかるかを伝えます。

お客様の中には美容室のあとに予定を入れている方もいらっしゃいます。
予約時に聞いていた(予約サイトに表示されていた)所要時間をもとにスケジュールを組んでいる場合もあり、何も伝えずに想定時間を過ぎるとクレームにつながるケースも。
また、次の予定がなかったとしても時間の見通しが立たないと不安にさせてしまいます。

施術やお会計にかかる時間+10分〜15分ほどの余裕をもたせた「退店できる時間」をお伝えしておきましょう。
施術中に想定時間をオーバーしそうなことが分かった場合は、お客様へ早めに確認してください。

 

6.料金の共有

予約時にお伝えしていた(予約サイトに表示されていた)料金よりも値段が上がる場合は、必ず正しい料金を伝えてください。
施術の途中でオプションメニューの追加やグレードアップがあった場合も同様です。

会計時に提示された価格がお客様の想定よりも高かった場合、信用を失ってしまいます。
「だいたい何円くらいです」のような伝え方ではなく、メニューごとの料金と合計金額を税込で正確に伝えるようにしましょう。

なお、信頼関係をまだ構築できていない新規のお客様には、予約時の料金よりも大幅に上がるような提案はしないほうがベター。
ガツガツした営業スタイルに感じ、敬遠される可能性が高いからです。
「今回の仕上がりにご満足いただけたら、よりカラー持ちするトリートメントもありますので、また気になればお声がけくださいね」など、さりげない提案に留めておきましょう。

 

7.施術後のアフターカウンセリング

施術終了後は、アフターカウンセリングとして自宅でのスタイリングのコツやホームケア方法などをアドバイスします。

プロによる仕上がりを自宅で再現できれば、満足度・信頼度の向上につながります。
美容室を出てからも理想のヘアスタイルをキープしていただけるように、ブローの方法やワックスの使い方、シャンプー・トリートメントの方法などを丁寧に伝えましょう。

このとき、最初のカウンセリングで聞き出していた普段の髪の扱い方や生活スタイルに合わせた提案ができるとGOOD。
店販につなげたいからと言って商品の提案をしてしまうと「営業か」とガッカリされる可能性があるため、まずはお客様が持っているアイテムでできる方法をアドバイスしてあげてください。
お客様から「さっきセットで使ってくださったワックスはここでも買えますか?」と聞かれてから提案するくらいがいいでしょう。

 

リピート率を上げるカウンセリングのコツ

カウンセリングを行う際はちょっとしたポイントを押さえるだけで満足度が上がり、リピート率向上のきっかけになります。
最後に、上手なカウンセリングのポイントをご紹介します。
普段のトーク・接客を振り返りながら確認していきましょう。

 

要望を正確に把握する

カウンセリングでは「今どんな髪のお悩みがあって、施術後にどうなりたいのか?」をしっかりと理解する必要があります。

「ご希望のヘアスタイルはありますか?」「今日はどんな雰囲気にしたいですか?」と質問したときに返ってくる最初の一言が、そのお客様が最も求めている要望です。
カウンセリングの過程で迷いが出たり、お任せでとなった場合でも、最初の一言を念頭に置いてヒアリングや施術を進めるようにしましょう。

お客様の要望に対して深掘りすることも大切です。
希望のヘアスタイルだけでなく、求めている雰囲気や過去のヘアスタイル、このサロンや美容師を選んだ理由、来店のきっかけ、そのスタイルにしたいと思った理由なども引き出せるとより理想に近い提案をしやすくなります。

また、なりたいイメージを聞き出すと同時に、なりたくないイメージも確認しておくと◎
好みじゃないテイストや過去に気に入らなかったスタイル、その理由までヒアリングできると安心です。

 

お客様を否定しない

カウンセリングから施術完了まで、お客様の話や髪の状態を否定する行為はやってはいけません。

例えば、お客様が持参した希望のヘアスタイル写真を見て、髪質や骨格などの理由から実現は不可能だと感じることもあるでしょう。
その場合でもいきなり否定から入らず「このスタイルかわいいですね!」と共感したり、「写真を持ってきてくださったんですね、ありがとうございます」と褒めたりすることを心がけてください。

次にそのヘアスタイルの気に入っている部分(シルエット・色・雰囲気など)を聞き出して、実現可能な代案を3パターンほど提案しましょう。
「お客様の場合は◯◯な髪質なので、こっちのスタイルだとセットが楽になりますよ」など理由を添えて複数提案することで、お客様に納得してもらいやすくなります。

 

できない施術や注意点も伝える

お客様の理想のスタイルにできるだけ近づけることが美容師の努めですが、プロとして実現できる要望とできない要望を見極める必要があります。
特に、希望を叶えようと無理やり施術することで髪にダメージをともなう可能性がある場合は、リスクと理由をきちんと説明しなければなりません。

例えば、「何度もブリーチをしているけれどパーマをかけたい」「黒染めしたばかりだけどハイトーンに変えたい」のような難しいオーダーが入った場合です。
先述のとおりお客様への共感・褒めの姿勢は忘れずに、施術のリスク(チリチリになる、パーマがかかりづらい、色落ちしやすいなど)と、代案や理想を叶える方法(次回以降の施術、ホームケア、セット方法など)を伝えましょう。

関連記事:美容師によくあるクレーム8選!対応方法や予防策について解説

 

話しやすい雰囲気で聞き役に回る

カウンセリングでは、お客様が髪の悩みやコンプレックスを打ち明けやすい雰囲気作りや緊張をやわらげる工夫が求められます。

お客様を施術用のイスにご案内したら斜め後ろに座り、鏡越しにしっかりと目を合わせながら笑顔で会話します。
お客様の話を遮らないように適度に相槌を打ち、聞き役に回りましょう。

「頭の形がキレイですね」「まとまりやすい髪質ですね」などプロ目線で気づいたお客様の良い点を褒めてあげると、より話しやすくなります。

 

施術中もこまめに確認する

最初のカウンセリングだけでなく、施術中もお客様への確認は欠かせません。
施術途中に不満を感じても言い出せないお客様が多く、後日のクレームやマイナスのレビューにつながるケースも。

途中でお客様に髪を触っていただき、「気になるところはありませんか?」「長さや量はこのくらいですか?」とこまめに確認しておくと安心です。
特に切りすぎると後戻りできないため、例えば最初に「5cm短くしたい」とのオーダーがあった場合は少し長めに残しておき、一旦確認を挟みます。
「さらに短くするとハネやすくなりますが切って大丈夫ですか?残しておきますか?」など、トラブルに繋がりそうな要素もあらかじめ伝えておきましょう。

 

まとめ

丁寧なカウンセリングによってお客様の要望に合わせたメニューを提案できるようになり、お客様の満足度も高まります。
ひとりひとりの髪のお悩み解決や希望を叶える納得のいく仕上がりを作り上げることで、指名やリピート率が高まり、美容師としてのやりがいも増すはずです。

カウンセリングを怠って独りよがりな施術を提供するのはNG。
技術力を高めると同時にカウンセリング方法を見直して、お客様の心を掴む接客を目指しましょう。

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