ネイリストの働き方として注目されている「業務委託」。
正社員やアルバイトのようにサロンに雇用されるスタイルではなく、フリーランスとして契約を結ぶ自由な働き方です。
近年、業務委託という選択肢を選ぶネイリストが増えている一方で、デメリットも存在します。
本記事では、ネイリストの業務委託の仕組みや報酬の相場、メリット・デメリット、契約の注意点などを詳しく解説します。
新たなキャリアを模索中の現役ネイリストさんや、ネイリストを目指している方はぜひ最後までご覧ください。
業務委託とは?ネイリストにおける基本概要
業務委託とは、企業やサロンと「雇用契約」ではなく「業務委託契約」を結ぶ働き方です。
この契約形態ではサロン側が仕事を「発注」し、個人事業主(フリーランス)として独立した立場のネイリストがその仕事を「請け負う」という形になります。
正社員やアルバイトとして雇用契約で働く場合のような、労働基準法に基づく保護がない一方で、働き方の自由度が高いのが特徴。
複数のサロンと契約を結んでもOKです。
なお、業務委託契約は企業・サロン側にもメリットがあります。
5人以上のネイリストやスタッフを雇用しているサロンでは、従業員の社会保険(半額)や労働保険(全額)、交通費などの各種手当を負担しなければなりません。
一方、業務委託のネイリストの場合は、社会保険料や福利厚生費の支出が軽減され、人件費を削減できるからです。
業務委託ネイリストの給料の相場
ネイリストが業務委託契約で得る収入は、「給料(給与)」ではなく「報酬」です。
業務委託契約では基本的に、月給制や時給制といった固定給ではなく、完全歩合給で働きます。
歩合率は企業・サロンとの契約によって異なりますが、経験が浅い場合は40%〜50%、経験者の場合は50%〜70%程度に設定されるケースが多いです。
得られる報酬額は1日の勤務時間やひと月あたりの勤務日数、価格設定や客単価、接客人数などによって大きく左右されます。
【報酬イメージ1:歩合率40%、客単価10,000円、月に50人を施術した場合】
売上:10,000円 × 50人 = 50万円
報酬額:50万円 × 40% = 20万円
材料費が30,000円、広告費が10,000円かかるとすると、
想定手取り額:20万円 − 3万円 − 1万円 = 16万円
【報酬イメージ2:歩合率55%、客単価12,000円、月に40人を施術した場合】
売上:12,000円 × 40人 = 48万円
報酬額:48万円 × 55% = 26万4,000円
想定手取り額:26万4,000円 − 3万円 − 1万円 = 22万4,000円
【報酬イメージ3:歩合率70%、客単価8,000円、月に30人を施術した場合】
売上:8,000円 × 30人 = 240,000円
報酬額:240,000円 × 70% = 168,000円
想定手取り額:168,000円 − 30,000円 − 10,000円 = 128,000円
関連記事:ネイリストの給料はどれくらい?働き方別の収入や給料アップの方法を紹介
業務委託ネイリストの働き方2パターン
業務委託のネイリストの働き方は、主に次の2パターンです。
①ネイルサロンのスタッフとして働く
②空きスペースやシェアサロンを借りて働く
①ネイルサロンのスタッフとして働く
いちスタッフとしてネイルサロンで勤務し、契約書で定めた報酬を受け取る働き方です。
施術に加え、予約・電話対応や集客、掃除といったサロン運営業務もネイリストが行うか、サロン側が担当するかは契約内容によって異なります。
サロンの一員としてスタッフ同士で連携しながら働ける一方、ルールや規定が厳しいサロンもあります。
②空きスペースやシェアサロンを借りて働く
美容サロンの空きスペースやシェアサロンをレンタルし、自分で集客したお客様に対してネイルサービスを提供する働き方です。
自分自身がサロンオーナー兼スタッフとなるので、業務上の全てのことを自分で決定・処理する必要があります。
サロンの中には、自分のお店を持ちたいネイリストの開業をサポートしてくれる企業もあるようです。
業務委託が向いているネイリストの特徴
以下に当てはまる方は、業務委託という働き方が向いている可能性が高いです。
- 高収入を目指したい人
バリバリ働いて収入を増やしたいと考えている
- 独立や開業を考えている人
資金面の不安から独立を諦めていた、将来開業を視野に入れて経験を積みたい - 自由な働き方を求める人
勤務時間や休日を自分で決めたい、規則や時間に縛られず柔軟に働きたい - 固定のお客様がすでにいる人
抱えている顧客に対して、自分のペースで施術を提供したい - フルタイム勤務が難しい人
正社員として働く時間は確保できないが、効率的に収入を得たい
一方で、業務委託での働き方が向いていない可能性があるネイリストは以下のとおりです。
- 安定した収入を求める人
毎月決まった給料を得たいと考えている - ネイリストとしての経験が浅い人
まだ固定のお客様が少ないと、集客に苦労する可能性が高い - 独立や開業に興味がない人
将来的に自分の店舗を持つ予定がなく、業務委託をキャリアアップとして捉えていない - 税金や保険、事務作業が負担に感じる人
ネイルの施術に集中したい、経理などの雑務が苦手 - プレッシャーに弱い人
自己管理や集客、トラブルの対応などが苦手
業務委託は自由度が高く、自分の努力次第で収入を伸ばせる魅力的な働き方ですが、すべての人に適しているわけではありません。
ご自身の性格やキャリアプランを見直し、自分に合った働き方を選びましょう。
業務委託以外のネイリストの働き方
ネイリストとして働く方法には、業務委託以外にも以下のような選択肢があります。
- 正社員
正社員として働くネイリストは、雑務に追われることなくネイルの施術に集中できます。
また、担当するお客様が少なくても毎月安定した給料を得られるため、安定した環境で働きたい人におすすめです。
- アルバイト・パート
出産や子育てなどでまとまった時間が取れない場合でも、アルバイトやパートとして働くことで柔軟に収入を得られます。
短時間勤務やシフト制を希望する方に適した働き方です。
- 開業
自分の店舗を持つ場合、ネイル施術だけでなく、経営やマーケティング、マネジメントの知識も必要です。
最初から開業を目指すのではなく、正社員やアルバイト、あるいはフリーランスで経験を積みながらスキルを磨くのが一般的です。
- フランチャイズ加盟
フランチャイズとは、既存のブランドやビジネスモデルを利用し、独立したオーナーとして運営を行う仕組みです。
フランチャイズに加盟すると、ブランドの認知度を活用して効率的に集客できるほか、経営ノウハウも学べます。
リスクを抑えて開業したい人におすすめです。
ネイリストが業務委託で働くメリット
ネイリストが業務委託で仕事を請け負うメリットは次のとおりです。
- 努力次第で収入を大きく増やせる
- 自由な働き方が可能
- お客様と丁寧に向き合える
- コストを抑えて独立できる
それぞれ詳しく解説します。
努力次第で収入を大きく増やせる
業務委託の報酬は歩合制で支払われることが多く、施術件数や単価を上げることで高収入を目指せます。
成果報酬型で仕事をすればするほど収入が増える仕組みです。
自分の努力やスキル次第で収入を大きく増やせる点は、やりがいやモチベーションの向上にも繋がるでしょう。
業務委託での平均収入は歩合率やサロンの集客力により異なりますが、月30万円以上を稼ぐネイリストもいます。
最新のアート技術や特殊技術に精通して高単価のメニューを提供したり、季節やトレンドに合わせたデザインを取り入れてリピーターのお客様を増やすことができれば、月100万円を超える収入も夢ではありません。
安定した収入を求めるよりも、ガツガツ働いて高収入を得たいという方に最適な働き方です。
自由な働き方が可能
シフトや勤務場所の自由度の高さも、業務委託のメリットのひとつです。
サロンの従業員として働く場合、決められた時間に出勤し、退勤時間までサロンにいなければなりません。
一方で業務委託の場合、勤務時間や休日を自分で決めることができ、プライベートと仕事のバランスを取りやすい点が魅力。
繁忙期や予約が多い時間帯に集中して働き、閑散期に休みを取ることもできます。
家事・育児や他の仕事との両立を望む方、ワークライフバランスを重視する方にとっては大きな利点です。
また、複数のサロンと業務委託契約を結ぶことが可能なので、時間だけでなく場所に縛られることもありません。
1週間は東京で働き、次の1週間は地方で働くなど、柔軟な働き方が可能です。
契約する内容にもよりますが、施術で使用するネイル道具のブランド、メニューの料金、勤務中の服装なども自由に設定できます。
お客様と丁寧に向き合える
業務委託で働くと、お客様ひとりひとりに対してより丁寧に向き合えるようになり、理想の接客を実現しやすいです。
回転率やノルマ、サロンの指示に縛られず、顧客の要望や好みに合わせた提案・施術を行うことで、リピーターの獲得につながるでしょう。
顧客との長期的な信頼関係を築きやすく、満足度の高いサービスを提供できる点が大きな魅力です。
また、このような顧客満足度の向上が、収入の安定や口コミによる新規顧客の獲得にもつながります。
複数のサロンと業務委託契約を結ぶ場合は、より幅広い属性のお客様と接する機会が増えます。
施術スキルや接客スキルを磨く場としても最適です。
コストを抑えて独立できる
ネイリストの業務委託は、同じ「独立」という括りの中でも、自分のサロンを開業する場合に比べて経済的な負担が少ない点がメリット。
開業では店舗の準備・運営にかかる費用や設備投資が必要で、初期費用だけでなく毎月の固定費もかかるため、安定した売上が見込めるまでは資金面での負担の大きさが気がかりです。
一方の業務委託の場合、サロンの提供する設備や道具を利用するため、コストやリスクを抑えて独立できます。
また、集客や運営をサロン側が行うケースも多いので、ビジネス面での負担が軽減され、目の前のお客様の施術に集中できる点も魅力です。
ネイリストが業務委託で働くデメリット
一方で、業務委託で働くネイリストには次のようなデメリットも存在します。
- 収入が安定しにくい
- 福利厚生がない
- 経理・事務作業も自分で行う必要がある
- 保険・税金の支払いや確定申告が必要
- ミスやクレームはすべて自己責任
事前に注意点を理解しておくことで、リスクを回避しやすくなるでしょう。
収入が安定しにくい
業務委託で働く場合、顧客数や施術件数によって報酬が変動するため、毎月同じ金額を稼ぐことが難しくなります。
働いた分だけ報酬が得られるので高収入を目指せる反面、働かなければ収入がゼロというリスクも。
特に集客力が低いサロンや低単価サロンで働く場合、収入が減少することも考えられます。
福利厚生がない
業務委託の場合、正社員やアルバイトのスタッフと違い、社会保険や有給休暇、各種手当などの福利厚生がありません。
例えば、住宅手当や家族手当、育児支援などの恩恵もなく、すべて自己負担。
休日手当や時間外労働手当がなく、休みの日に仕事や残業をしても報酬は同じです。
万が一のケガや病気による休業時には収入が途絶えるリスクもあるため、計画的な貯蓄や、医療保険や収入補償保険への加入をおすすめします。
また、研修やスキルアップの制度も基本的にはありません。
自分で費用を払って外部の講習会やセミナーに参加する必要があります。
事務作業も自分で行う必要がある
業務委託契約の場合、ネイル施術に加えて、経理やサロン運営に関わる次のような事務作業も自分でやらなければなりません。
- 売上や経費の記録
- 在庫の管理・発注
- 顧客情報の管理
- お客様との連絡
契約内容によっては、備品の準備や広告宣伝の費用が自己負担のケースもあります。
施術だけでなく、幅広い業務に時間と労力を割く必要があるため、マルチタスク能力が求められます。
効率よく管理できるようなツールを活用したり、サロンワーク以外の作業スキルを高めたりする努力が必要です。
デメリットである反面、自己管理が得意な方やサロン開業を目指している方にとっては、適した働き方だと言えるでしょう。
保険・税金の支払いや確定申告が必要
業務委託で働く場合、保険や税金の支払いはすべて自己負担です。
収入が安定しないネイリストだと、大きな負担を感じるでしょう。
業務委託契約では、雇用契約のように、健康保険や厚生年金を会社が代行して給与から控除する仕組みはありません。
代わりに国民健康保険や国民年金に加入し、その手続きや支払いも自分で行わなければなりません。
また、税金に関する手続き(確定申告)も自分で行う必要があります。
雇用契約の場合、給与を受け取るときには、源泉徴収税や所得税などは事前に計算されて差し引かれた金額になっており、原則として年度末に確定申告を行う必要はありません。
一方の業務委託契約では、年間の合計所得金額が48万円を上回る場合、自分で確定申告を行う必要があります。
日々の売上や経費を正確に記録し、領収書なども管理しなければなりません。
申告忘れや計算ミスによってペナルティが発生することもあるので、注意が必要です。
税務知識がない場合は、税理士に費用を払って依頼するケースもあります。
ミスやクレームはすべて自己責任
サロンに雇われている場合、従業員が過失を起こした際にはサロン側が責任を負って対応してくれることが多いです。
しかし、業務委託の場合、施術ミスや顧客からのクレームはすべて自己責任です。
万が一トラブルが発生した場合は、冷静に自分で対処しなければなりません。
クレーム対応に慣れていない方や、顧客対応に不安がある方にとっては、精神的な負担が大きいでしょう。
反対に責任感の重さをやりがいに感じられるタイプなら、前向きに仕事をすることができます。
また、クレームの大きさによっては賠償責任が生じる可能性も。
金銭的なリスクを軽減するために、損害賠償保険などへの加入を検討してみてください。
ネイリストが業務委託契約で確認すべきポイント
ネイリストが業務委託で働くなら、必ずサロンとの契約書を交わしてください。
契約書なしで業務をスタートしてしまうと、報酬面や働き方の認識の相違によりトラブルに発展する可能性も。
なかには裁判にまで発展してしまうケースもあるため、次のような項目はすべて事前に契約書上で定めておき、内容に納得したうえでサインしましょう。
- 業務内容
- 報酬形態
- 材料費や家賃等の負担
- 契約期間や解約条件 など
業務内容の範囲
サロンで担当する業務範囲をしっかり確認しましょう。
業務内容が施術のみか、売上や予約管理、掃除などの付帯業務も含まれるのかを確認しておくことが大切です。
報酬形態や歩合率
ネイリストの業務委託契約では、施術代金(売上)の40〜70%程度が報酬として支払われるケースが一般的。
なかには、フリー・指名・店販の還元率や各メニューの還元率が個別で設定されていたり、一定の売り上げを超えると追加のインセンティブが用意されていたりする場合も。
サロンによって歩合率が違うため、事前に確認しましょう。
集客サポートの体制
業務委託契約を結ぶ際には、サロンが提供する集客支援の有無やその内容(SNSでの宣伝、広告掲載、ウェブ予約システムなど)を確認しましょう。
特に、経験の浅いネイリストは集客が難しく、収益が赤字になってしまう可能性があるため、こうしたサポート体制が重要です。
また、サロンのターゲット層や集客方針が自身の施術スタイルと合っているかも要チェック。
高単価のアートネイルが得意なネイリストさんなら、リピーター獲得が得意なサロンや高価格帯のお客様が集まりやすいサロンを、シンプルなデザインやネイルケアをしたいネイリストさんなら、幅広いターゲットにリーチしているサロンやビジネス街にあるサロンなどが働きやすいでしょう。
出勤日数や休暇
業務委託で働く場合、シフトは自由に決められるケースがほとんど。
ただし、サロンの営業日や営業時間に沿った勤務になる場合が多いため、事前に確認しておきましょう。
また、なかには週・月あたりの出勤日数や曜日に関してルールがあるサロンや、土日祝日や繁忙期の出勤がマストになっているサロンも。
- ライフスタイルに合わせて無理なく働けるか?
- どの程度柔軟に対応してもらえるか?
- 急な休みを取る場合はどのような手続きが必要か?
なども確認・交渉することをおすすめします。
自己負担の範囲
業務委託契約において、次の費用を自己負担する場合もあります。
- 家賃・場所代
- 材料費
- 光熱費
- 設備利用費 など
売上や契約年数によって負担額が変わる場合もあるため、金額や支払い方法、支払うタイミングなどを確認しておきましょう。
ネイル用品や消耗品などの材料に関しては、持ち込みの可否や、サロン側が提供する材料の種類・品質もチェックするポイントです。
契約の更新や解除の条件
業務委託契約には、更新条件や解除手続きがあることが多いです。
契約期間、更新スケジュール、解除条件(違約金など)、更新・解除の手続き方法などをしっかり確認しておきましょう。
サロン側から通知がある場合と、ネイリスト側から申し出る場合の両方のケースを把握しておくと、トラブルを未然に防げます。
まとめ
ネイリストとして業務委託で働くことは、自由な働き方ができる魅力的な選択肢です。
将来的に独立開業を目指すネイリストにとっても、リスクを抑えながら経験と顧客基盤を築ける理想的なステップと言えるでしょう。
スキルや経験を活かしながら高収入を目指せる反面、収入の不安定さや自己負担費用といったリスクも伴います。
成功のポイントは契約内容をしっかり確認することと、自身のキャリアプランやライフスタイルにマッチしたサロンを選ぶことです。
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