美容師の離職率は何%?3人に1人が3年以内に辞める理由や職場探しのコツを解説

美容師の数は年々増加しているにもかかわらず、慢性的な人手不足に陥っていると言われています。

華やかなイメージがあり、「美容業の花形」とも言われる人気の職業である一方、「離職率が高い」「人材が定着しにくい」というマイナスな印象を抱いている方もいるのではないでしょうか。

ストレスフルな現場や理想と現実のギャップの大きさといったさまざまな理由から、せっかく国家資格を取得しても辞めてしまう美容師は少なくありません。

本記事では、美容師の離職率の実態や離職に至る原因を探ります。

記事後半では長く勤められるサロン探しのポイントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

関連記事:美容師が辞める理由10選!辞めたい時の対処法や面接での退職理由・転職理由の答え方も解説

美容師の離職率はどれくらい高い?

美容に関する調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」による「美容サロン就業実態調査(2024年)」によると、美容師の最初の就職における就業期間は以下であることが分かりました。

初職就業期間

割合

1年未満

10.0%

1年以上〜3年未満

26.7%

3年以上〜5年未満

21.1%

5年以上〜7年未満

10.5%

7年以上〜10年未満

7.9%

10年以上

23.8%

上記のとおり、新人美容師における3年未満の離職率は36.7%にのぼるということです。

その後の転職先としては美容師を継続する人(別のサロンに就職する人)が55.4%であるのに対し、3割以上の人が美容関連以外の職業に転職またはどこにも就職していないことが明らかになっています。

また、休眠美容師の割合は58.3%。

美容師免許を取得している人のうち過半数が、現在は美容師として働いていないということです。

ちなみに厚生労働省の調査(2023年発表)によると、全職業における就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者が37.0%、新規短大等卒就職者が42.6%、新規大学卒就職者が32.3%となっています。

「他の職種に比べて美容師の離職率が特に高い」というわけではなさそうですが、同業種への転職ではなく、異業種への転職や完全な離職が多い点は注目すべきポイントでしょう。

美容師の離職率が高い7つの原因

毎年2万人以上が美容師国家試験に合格し、美容師免許を取得しています。

そんな人気職であるにもかかわらず、3人に1人以上が3年以内に離職し、その半数以上が美容師という職業自体も辞めてしまう理由は何なのでしょうか。

妊娠・出産や子育て、介護など家庭の事情を除くと、次のような理由が挙げられます。

1.下積み期間が長い

美容師という職業は「アシスタント」としてサロンワークをスタートし、実力と経験を積んでからお客様に施術を提供する「スタイリスト」としてデビューする流れが一般的ですよね。

技術的に未熟で実務経験のない就職後初期の段階では、アシスタントとしてスタイリストの施術やサロン運営の補助業務を担当します。

この下積み期間の目安は約2〜3年と言われていますが、働いているサロンやスキルによって個人差があり、長い場合は5年以上かかるケースも。

アシスタントのメインの業務はシャンプーや清掃など、いわゆる「美容師」と聞いてイメージするような技術を発揮する仕事が少ないです。

ひとりひとりのお客様に向き合って直接「ありがとう」を伝えられる機会も少ないので、なかなかやりがいを感じにくい期間でもあります。

アシスタント期間が長くなると、「いつスタイリストになれるんだろう」「憧れていたような仕事がなかなかできない」「業務内容がつまらない」と焦りや不満を感じ、離職を選ぶパターンが多いようです。

関連記事:​​美容師のアシスタントは何する?業務内容や給料、スタイリストになる方法などを解説

2.給与が低い・不安定

先述の「美容サロン就業実態調査(2024年)」において、初めて就職したサロンを辞めた理由として最も多かった回答が「給与に対する不安」です。

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、美容師の年収は319万8200円。

これに対し、国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査結果」によると、日本人の平均年収は443万円となっています。

美容師の給与水準は年々上がりつつあるものの、まだまだ全職種の平均より低い水準です。

特に、アシスタントの平均年収は170〜220万円(キレイビズ算出)となっており、指名料や歩合も発生しないため厳しい収入状況が予想されます。

また、施術道具や練習用マネキンなどの仕事道具を自己負担で用意しなければならないサロンもあるでしょう。

ほかにも、

  • 長く働いているのに給料が上がらない
  • 仕事の成果が給与に反映されない(評価されていない)
  • 基本給と歩合のバランスが悪い
  • 成果による給与の変動が大きい
  • 給与査定の仕組みに納得できない

のような意見も。

国家資格や専門的なスキルが求められる職業にもかかわらず、「給与が低い」「収入が不安定」など金銭的なストレスが溜まりやすい状況です。

3.拘束時間が長い

1日あたりの労働時間の長さや休日の少なさも離職につながる原因のひとつです。

サロンによって営業時間は異なりますが、美容師の労働時間は原則「1日8時間以内」「1週間あたり40時間以内」と労働基準法で定められています。

これを超える場合は届出が必要で、月45時間以内、年360時間以内(1日に換算するとおよそ2時間)の時間外労働が認められています。

しかし実際には、1日10〜12時間ほどの長時間労働になっているサロンもあるようです。

8時間を超える勤務では1時間以上の休憩時間を確保しなければなりませんが、忙しくて休憩をなかなか取れない場合も。

始業前の準備や営業後の清掃も労働時間に含まれるはずですが、“サービス残業”になってしまっているケースも少なくありません。

関連記事:美容師の勤務時間は労働基準法で決まっている!休憩時間や残業時間についても解説

また、一般企業の休日が1ヶ月に8〜10日程度だとすると、美容師の休日は5〜6日程度。

休みが少ないことに加えて休日も練習や勉強会に参加したり、カットモデルを探したりと時間を費やすことも多いです。

関連記事:美容師の休日に関する疑問を解説!定休日や年間休暇、休日の過ごし方などまとめてみた

このような理由からプライベートの時間を取りにくく、ワークライフバランスが崩れがちに。

拘束時間の長さに対して給与水準が低いことも相まって、ストレスを溜めてしまう人も少なくありません。

4.体力的な負担が大きい

美容師の仕事は基本的に、1日中ほとんど立ちっぱなしで作業を行います。

立ち仕事なだけでなく、シャンプーやカットなど施術内容によってはかがんだり、腰を曲げたりと体に負担のかかる体勢になることも。

腰痛や肩こり、足の疲れやむくみは美容師の職業病だと言えるでしょう。

また、カラー剤やパーマ剤などの薬品や水仕事によって手荒れになったり、長時間のカットによって腱鞘炎になったりというケースもあります。

体力が必要な仕事なのに十分な休息や食事をとりにくいため、体調を崩してしまうこともあるでしょう。

このように、体力面での限界を感じて仕事を続けられなくなるパターンも多いです。

5.精神的なストレスがある

接客業である美容師の仕事は、体力面だけでなく精神面にも負担がかかります。

お客様の満足度を高めるためには、美容師としてのスキルだけでなくコミュニケーション能力も欠かせません。

しかし、「接客に苦手意識がある」「施術中のトークが苦手」「1日中愛想よくするのが疲れる」「気難しいお客様がいる」など、常に気を遣わなければいけない状況にストレスを感じている美容師は意外とたくさんいます。

加えて、職場内における人間関係のトラブルも。

  • 上司(オーナーや店長)を尊敬できない
  • 他のスタッフと意見や考え方が合わない
  • 同僚を信頼できない
  • ハラスメントを感じる
  • 切磋琢磨できる環境でない

など、狭い職場かつ拘束時間が長いので、サロンにいるメンバーと気が合わなければストレスが溜まりやすいのは当然です。

対人関係の多い美容師という職業は、精神的なストレスも少なくないでしょう。

6.福利厚生が整っていない

個人経営のサロンが多い美容業界は、他の業界に比べて福利厚生が整っていないという実情があります。

  • 社会保険(健康保険や厚生年金など)に加入していない
  • 自分で国民健康保険や国民年金に加入しなければならず負担が大きい
  • ボーナスや退職金がない
  • 失業手当がもらえない

このような福利厚生が充実していないサロンだと、長く働き続けることは難しいのかもしれません。

7.会社に将来性を感じない

サロンの売上不振や方向性・価値観の不一致から、会社の将来性に不安を感じる人もいるようです。

就職活動の段階でサロンのコンセプトや社風、方針、サロン内の雰囲気などを把握しきれていないと、入社後にミスマッチが起こります。

上記に加え、一緒に働くスタッフのやる気のなさや教育体制の未熟さ、チャレンジする風潮がないことなどから将来が不安になり、離職の道を選ぶ人もいます。

美容師が長く働けるサロン選びのポイント

美容師として長く、気持ちよく働き続けるためには、就職先となるサロン選びを慎重に行う必要があります。

働くうえで自分が大事にしたいポイントを洗い出し、条件にマッチするサロンを探しましょう。

ここでは、サロン選びでチェックすべき項目をご紹介します。

待遇や福利厚生の充実度

美容師の離職理由で多いのが、給与や福利厚生への不安です。

待遇が希望に見合っていないと働きにくく感じることも。

次のような項目をしっかりとチェックし、就職先候補の比較・検討に役立てましょう。

  • 賃金および勤務時間
  • 休憩時間の取得状況
  • 年間休日
  • 歩合給(歩合率、指名料など)
  • 昇給・評価制度
  • 賞与・ボーナス
  • 社会保険の加入状況
  • 交通費(通勤のしやすさも合わせてチェック!)
  • 住宅手当
  • 健康診断の実施
  • 独立・開業支援
  • 時短勤務
  • 特別休暇(誕生日休暇、生理休暇など)

サロンの雰囲気やスタッフの人柄

サロンの雰囲気・テイストや一緒に働くスタッフの人柄は、求人票を見るだけではなかなか把握しづらいですが、長く働くうえで重要な要素です。

美容師は一般企業と異なり、少人数の従業員かつ狭いサロンの中で長時間過ごします。

いくら待遇面・条件面が希望通りであっても、働く環境にストレスを抱えてしまうと離職の原因になることも。

採用されるまでの過程で確認しておかないと、「思っていたのと違った」と入社前後のギャップが起こる可能性があります。

可能であれば、実際にサロンを見学することをおすすめします。

サロン見学を実施していない職場の場合は、顧客として施術を受けに行くのもいいでしょう。

  • サロンから感じ取れるイメージ(ナチュラル、アットホーム、高級感など)
  • スタッフの技術力やサービスの質
  • サロンで使用している機材や薬剤
  • スタッフの表情やコミュニケーション
  • アシスタントの働き方
  • バックルーム・スタッフルームの状態
  • 懇親会やイベントの有無

上記のような実情を確認し、認識のずれをできるだけ減らすようにしてください。

教育・サポート体制

教育制度や研修制度、スタッフ体制へのサポート制度がしっかりしているサロンは、スタッフの満足度が高い傾向にあります。

美容師として成長できる環境が整っているからです。

常に学びが必要な美容師という職業でキャリアアップを目指すなら、重要な要素になります。

  • スタイリストデビューまでの期間や基準
  • サロン内での研修の内容
  • 外部の講習会やセミナー
  • 練習の時間や費用
  • 勉強代や学費の補助制度
  • 資格取得の補助制度
  • 面談や1on1の実施
  • 新入社員の研修や教育制度(OJTなど)
  • 役職(トップスタイリスト、店長、マネージャーなど)

上記のような取り組みに加え、実際に働いている先輩美容師の働き方や勤続年数、モデルケースとなるキャリアプランも確認できると◎

面接やサロン見学で直接質問するだけでなく、美容情報サイトや知り合いからのクチコミも確認しましょう。

柔軟な雇用形態

妊娠・出産や子育て、介護、体調の変化など、家庭・個人の事情で離職してしまう美容師も少なくありません。

プライベートの状況やライフステージに応じて、フルタイムの正社員以外にも柔軟な働き方を選べるサロンなら、より長く活躍できるでしょう。

  • 勤務日数
  • 勤務時間
  • 雇用形態(アルバイト・パートや業務委託など)
  • 時短勤務や休業制度
  • 美容師以外の働き方(ヘアメイクアーティスト、スパニスト、アイリスト、アイブロウリストなど)

上記のような項目を相談・変更できるのかどうか、確認してみてください。

会社の方針

サロン(会社)の方向性や価値観が自分の考えと異なる場合、ミスマッチが起こる可能性があります。

例えば、あなたが「できるだけスピーディーに、たくさんのお客様に対応して経験を積みたい」と考えているなら、ひとりひとりとじっくり向き合うサロンには適していないでしょう。逆もまた然りです。

  • 企業理念
  • ミッション・ビジョン・バリュー
  • 代表メッセージ
  • スタッフの評価基準
  • ターゲット顧客
  • メニューの内容や価格

などの情報から会社の方針を読み取り、自分の考え方と合っているかどうか確認してみてください。

まとめ

美容師という職業に憧れて国家資格を取得する人は多いですが、実際には3年未満に3人に1人以上が離職しているという状況です。

「美容師の離職率が高い」と言われる原因としては、待遇の悪さや無理のある働き方などさまざまな理由が挙げられます。

美容師として経験を積んで着実にキャリアアップしていきたいなら、働きやすい環境が整っているサロンを選ぶべきでしょう。

美容師は本来、お客様の美しさをサポートできるやりがいのある仕事です。

離職せずに長く働けるサロンを見つけ、美容の知識・技術や国家資格を活かしてステップアップを目指してくださいね。

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