ネイリストは、お客様の爪や指先を美しく彩ることで喜んでもらう仕事です。
そんなネイリスト業界で注目されている「福祉ネイル」をご存じですか?
福祉ネイルとは、施設や自宅を訪問して高齢者や障がい・病気をお持ちの方々にネイルケアを提供するサービスのこと。
ネイルアートは若い世代だけでなく、高齢者や外出が困難な方にとっても生活を明るくし、自己肯定感を高める手段として注目されているのです。
本記事では福祉ネイルの魅力や施術内容、一般のネイリストとの違い、さらに福祉ネイリストになるための方法までを詳しく解説します。
ネイリストを目指している方や新しい働き方を知りたい現役ネイリストさん、高齢者ケアに関心がある方はぜひ最後までご覧ください。
福祉ネイルとは
福祉ネイルとは、ネイリストが高齢者や障がい・病気をお持ちの方の自宅や施設などに足を運んで提供するネイルサービスです。
ネイルサロンまで足を運ぶことが難しいお客様の爪をきれいに整えたり、コミュニケーションを通じて心のケアをサポートしたりします。
福祉ネイルを行うネイリストには、美容と福祉の両方の知識・技術が求められます。
ただ爪を美しくするだけではなく、メンタル面でのケアや自尊心・自信の向上、リハビリの一環としての役割も担っているからです。
ネイルボランティアとの違い
福祉ネイルは、通常のネイルサロンでの施術と同様に有料サービスです。
一方、ネイルボランティアはネイルのケアやカラーリング、ハンドトリートメントなどの施術を無償で行うことを指します。
ネイルを通してお客様に笑顔になってもらえる点や元気になってもらえる点では共通しています。
福祉ネイルは通常のネイルとどう違う?
福祉ネイルは、お客様の属性や働く場所、施術内容や働き方などいくつかの要素が一般的なネイルとは異なります。
お客様(対象者)
福祉ネイルの対象者は、自分でネイルサロンに通うのが困難な方です。
- 歩くのが難しい高齢者
- 介護が必要な方
- 重い病気やケガがある方
- 身体を動かせない方
- 震災などの被災者 など
働く場所
通常のネイルは、ネイルサロンやネイルサービスを提供している美容室・トータルビューティーサロンなどで施術を行います。
一方の福祉ネイルは、ネイリストがお客様がいる場所まで訪問する出張サービスです。
- お客様の自宅
- デイサービスや老人ホームなどの介護福祉施設
- 病院・医療機関
- 障がい者支援施設 など
施術の目的と内容
福祉ネイルでは安全性と快適さを最優先にしたネイルケアサービスを提供します。
一般的なネイルと異なり、華美なデザインよりも、爪や手の健康を守り、心身のリフレッシュを目的とする施術が中心です。
福祉ネイルで行う主な施術は以下の通りです。
- ハンドマッサージ:手全体を優しくほぐし、血行を促進します。
- ハンドケア・爪磨き:爪や手を清潔に保つためのケアを行います。
- カラーリング:速乾性マニキュアを使い、負担を軽減しながら爪を美しく整えます。
- ペイントアート:安全な方法で模様や絵を施します(シールを使う場合もあり)。
一方で、お客様への負担を考慮して以下のような施術は一般的に行いません。
- ジェルネイル:オフに時間がかかり、爪に負担がかかるため。
- 細かいパーツを使ったデザイン:ビーズやラインストーン、パーツ類の使用は誤飲リスクがあるため。
施術時間は、一般的なネイルサロンでは1〜2時間程度かかる場合が多いですが、福祉ネイルでは10分〜30分程度が目安。
お客様の体力や健康状態を考慮して長時間の施術を避け、シンプルかつ短時間で仕上げる技術が求められます。
また、福祉ネイルの施術の目的は単なる美容だけではありません。
- 爪や手を清潔に保つことで健康維持をサポートする
- 手元を美しく整えることで自己肯定感を向上させ、ストレス発散や心のケアを行う
- 施術中のコミュニケーションを通じて、精神的安定や癒しに繋げる
などを目的としており、高齢者の生活の質(QOL)を向上させるための重要なサポートサービスと言えます。
働き方(契約形態)
福祉ネイルを行う場合、一般的なネイリストとは異なり、業務委託契約(フリーランス)での働き方が主流です。
一般的には特定のネイルサロンに就職する(雇用契約)のではなく、高齢者施設や福祉関連団体などから個人で業務を受託する形で働きます。
一部ではアルバイトとして施設に雇用される場合や、施設内でのネイルイベントなど短期的な仕事を受けることもありますが、少数派です。
十分な仕事が確保できる保証や、正社員・契約社員のような安定した収入が得られるわけではないため、副業として活動するケースも多いです。
福祉ネイルの仕事を得るためには、自分で施設や顧客を探し、営業活動や信頼関係の構築を行う必要があります。
なお、日本保健福祉ネイリスト協会などの団体に所属すると、施設や顧客を紹介してもらえるケースがあります。
団体を通じて訪問先の情報提供やスキルアップの機会を得られる場合もあるため、個人で活動するよりも仕事を始めやすい環境が整うかもしれません。
給料・収入
福祉ネイルの施術料は1人あたり1,000円〜3,000円程度が一般的です。
先述のとおり施術時間が10分〜30分程度と短いため、1施設で多くのお客様に対応することで効率的に収入を得られる可能性があります。
例えば、1施設で10人施術すれば1日1万円〜3万円程度の収益が見込めますが、安定的に施設を訪問できるかが収入に大きく影響します。
現状では、福祉ネイルは比較的新しい職業であるため、求人募集は少ない状況。
福祉ネイルの仕事1本で生計を立てるのは難しく、一般的なネイルサロンでの本業にプラスした副業として行っている人、あるいは他職種との掛け持ちをしている人が多いです。
ただし、自由な働き方が可能なため、子育てや家庭との両立を目指す方に適しているでしょう。
また、今後は少子高齢化社会における需要拡大に伴い、収入面での改善や新しい雇用形態が生まれる可能性もあります。
関連記事:ネイリストの給料はどれくらい?働き方別の収入や給料アップの方法を紹介
注意点
福祉ネイルでは、お客様の健康状態や個別の状況を把握し、心理的な安心感を最優先に考えることが重要です。
体調や気分に合わせて施術時間を短縮したり、施術内容を変更したりする柔軟な対応も求められます。
例えば、認知症の方だと施術中に急に立ち上がる、手を動かす、大きな声を出すなどの行動が見られる可能性があります。
落ち着いて施術を進めるために、周囲に危険がないか確認し、必要であれば介助者に立ち会ってもらいましょう。
ケガや感染症などで施術が難しい指や手足がある場合があります。
事前に施設職員やご家族から情報を共有してもらい、施術を調整してください。
また、施術前の準備も大切です。
「だいたい20分ほどで終わります」「こんなネイルをしますよ」など所要時間や施術内容を事前に伝えることで、安心感を与えられます。
施術場所は手すりの近くや車いすの固定が可能な場所など、安全に施術できるスペースを確保し、お客様がリラックスできる環境を用意しましょう。
福祉ネイルができるネイリストになるには?
福祉ネイルを行うために必須となる資格は特にありません。
無資格でも仕事を始めることが可能ではありますが、資格を取得すればネイルや介護に関する知識・技術を身につけることができ、お客様にも安心してもらいやすいです。
1.資格を取得する
福祉ネイリスト®︎の専門資格は、一般社団法人日本保健福祉ネイリスト協会(JHWN)が提供する「福祉ネイリスト認定制度」を受けることで取得可能です。
全国にある認定校にて3時間×7回(JNEC2級以上をお持ちの方は5時間×2回)の講習を受け、卒業試験(実技)に合格し、その後実際の施設で行われる実地研修に合格すると無事に取得となります。
上記の講習では、福祉ネイルならではの施術時の工夫や、高齢者の病気に対する知識も学べます。
資格の取得後も、協会や各卒業認定校のフォローを受けられるので安心です。
その他持っておくとよい資格としては、「介護職員初任者研修(旧:ホームヘルパー2級)」が挙げられます。
特別な受講資格は必要なく誰でも取得可能で、介護現場での基礎知識が身につくため高齢者対応がスムーズになります。
教材を使用した通信学習に加えて、一部の対面講義や実技演習などを行い、試験に合格すると資格が取得できます。
130時間のカリキュラムで、平均受講期間は1ヵ月〜4ヵ月です。
関連記事:ネイリストにおすすめの資格4選!無資格から取得までの流れや気になる疑問も解説
2.道具の準備や手続きを行う
福祉ネイルを行うために、基本的なネイル道具や持ち運びやすいアイテムを準備しておきましょう。
- ネイル用ポリッシュ(カラー、クリア)
- ネイルチップ
- ファイル(爪やすり)
- キューティクルオイル
- ネイルブラシ
- 消毒用アルコールやウェットティッシュ
- 足元や手元を照らすための小型ライト(必要に応じて)
- 道具を収納するための化粧バッグやリュック など
また、活動を行う場所の市区町村で必要な手続きを行い、事業を開始する準備を整えます。
- 開業届の提出
開業から1ヶ月以内に、窓口または郵送で税務署に提出します。 - 個人事業主としての登録
青色申告などの各種税務上の手続きも忘れずに行いましょう。
3.求人を探す
福祉ネイリストとしての仕事を見つけるために、就職支援エージェントや求人情報サイトの活用を検討してみましょう。
特に、美容業界や福祉業界に特化したサイト・サービスをおすすめします。
就職支援エージェントは、求職者と求人元企業をつなぎ、専門的なアドバイスを提供するサービスです。
専任のアドバイザーがマンツーマンで支援を行い、求人紹介や企業・施設との交渉をサポートしてくれます。
非公開の求人情報を取り扱っているケースもあり、他では見つからない求人に出会える可能性があります。
検索条件を絞り、空いた時間に自分のペースで探したいなら求人情報サイトの利用が◎
美容業界の求人情報サイトとしては圧倒的な数の情報が掲載されている「キレイビズ」なら、ぴったりな職場に出会えます。
福祉ネイルならではの魅力・やりがい
福祉ネイルには、身体的なメリットだけでなく、精神面にも良い影響を与える魅力があります。
ネイルを通じて高齢者のQOL(生活の質)向上や、心身のリラックスを促すだけでなく、お客様との温かいコミュニケーションを育むこともできます。
関連記事:ネイリストに向いている人の特徴7選!反対に向いていない素質とその克服方法も解説
QOLを上げられる可能性がある
福祉ネイルは、日常生活に変化をもたらし、利用者のQOLを向上させる取り組みとして注目されています。
お客様は爪や指先がきれいになることで、日々の生活がより華やかになり、おしゃれを楽しむことで気分やモチベーションがアップします。
女性は年齢を重ねても美容に対して関心が高い人が多く、福祉ネイルで気分が良くなり、他の美容にも興味を持つきっかけとなることも。
男性にも爪を磨いたり透明マニキュアを塗ったりするケースがあり、性別に関係なく、ネイルを提供することでお客様の笑顔を見ることができるのは大きなやりがいです。
なお、福祉ネイルは認知症の予防や改善効果も期待されており、施設でのレクリエーションやイベントとして取り入れられるケースも。
視覚的な刺激を提供し、記憶や感情に良い影響を与えると考えられています。
実際に認知症の方に施術を行うと、身だしなみに気を使うようになり、他者との関わりが増えるなど、症状が軽減する例もあるようです。
メンタルケアができる
福祉ネイルを通して、リラックスを提供できることも大きな魅力です。
手のひらを握ったり、目を見て会話をすることで「オキシトシン」が分泌され、安心感や幸福感がもたらされます。
ネイルの施術を受けることで「大切にされている」と感じ、心の満足感や幸福感を得られます。
また、爪がきれいになることで、家族や施設スタッフ、他の利用者から褒められ、自信や自己肯定感が増します。
暗い気持ちを癒し、精神を安定させる効果もあるでしょう。
コミュニケーションが取れる
福祉ネイルは、ネイリストとお客様が1対1で施術を行うことで信頼関係が築きやすいです。
施術を通じてスキンシップやコミュニケーションを深めることができる点もやりがいのひとつ。
施設に入所している方は、スタッフ以外と会話する機会が少ないため、福祉ネイルを通じて生まれる新たな交流はとても喜んでもらえます。
また施術後には、「素敵ですね」「きれいですね」と周りから声をかけてもらえるなど、他者とのコミュニケーションのきっかけ作りにも貢献できます。
まとめ
福祉ネイルは、さまざまな理由でネイルサロンに通えない方々に向けて提供される専門的な美容サービスです。
ネイルを通じてお客様の心と身体に良い影響を与えることができれば、ネイリストは「ありがとう」と感謝の言葉と笑顔をもらえ、大きなやりがいを感じられるでしょう。
今後、高齢者や障がい者向けの美容サービスの需要はさらに増加すると予想されるため、福祉ネイルの活躍の場が広がる可能性が大きいです。
認定を受けて福祉ネイリスト®︎として活動すれば、美容分野で仕事の幅を広げながら社会貢献をすることもできます。
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