「美容が好きだけど、美容師とアイリストってどう違うの?」
「美容師免許を持っているけど、アイリストに転職できる?」
美容業界には多くの職種がありますが、その中でも美容師とアイリストは国家資格である「美容師免許」が必要な仕事です。
どちらもお客様を美しくする職業ですが、働き方や収入、キャリアの方向性は大きく異なります。
本記事では、現役の美容師・アイリスト、そしてこれから美容業界で働きたい方に向けて、美容師とアイリストの違いについて、仕事内容・年収・働き方などさまざまな視点から比較し、美容師からアイリストへの転身方法も含めてわかりやすく解説します。
美容師とアイリストの基本的な違い
美容師とアイリストは、いずれも美容師免許を持つ国家資格者。
髪やまつげ・眉といった“外見の印象を左右するパーツ”を扱うプロフェッショナルです。
共通しているのは、
・美容師法に基づいた施術を行う
・お客様の理想をヒアリングし、形にするデザイン力が求められる
・手先の器用さや衛生管理が欠かせない
といった点です。
どちらも感性と技術、そして接客力で成り立つ職業であり、お客様の自信を引き出すクリエイティブな仕事といえます。
仕事内容の違い
それでは、施術部位・サービスを含めいったいどのような点が異なっているのでしょうか。
まずは、それぞれの仕事の中身を比較してみましょう。
| 比較項目 | 美容師 | アイリスト |
| 主な施術 | カット・カラー・パーマなど | まつげエクステ・まつげパーマ・アイブロウデザイン |
| 主なお客様層 | 幅広い年齢層(男女問わず) | 20〜40代の女性が中心 |
| 接客スタイル | 会話を通じたカウンセリング重視 | リラックス重視・静かな環境での施術 |
| 働く場所 | 美容室・サロン・訪問美容など | アイラッシュサロン・トータルビューティーサロンなど |
| 施術時間 | カット30〜60分/カラー約90分 | まつエク・パーマ60〜120分 |
| 必要資格 | 美容師免許(国家資格) | 美容師免許+技術講習や民間資格が望ましい |
美容師は“髪全体をデザインする総合職”、アイリストは“目元に特化したスペシャリスト”といえます。
どちらもお客様の印象を変える大切な役割ですが、ざっくり分けると
・「トーク・会話が好き」「ヘアスタイルで変化を出したい」なら美容師
・「細かい作業が得意」「静かな空間で集中して施術したい」ならアイリスト
が向いています。
働き方の違い
仕事内容だけでなく、1日の流れや職場環境にも違いがあります。
| 比較項目 | 美容師 | アイリスト |
| 勤務スタイル | シフト制/立ち仕事 | 指名予約制/座り仕事 |
| 1日の平均施術人数 | 約10〜20人 | 約5〜8人 |
| 休日・勤務時間 | 月曜または火曜定休+週1〜2日/10〜12時間勤務 | 定休なし週1〜2日/実働8時間前後が多い |
| 体力的負担 | 高い(立ち仕事・洗髪・ブローなど) | 比較的少ない(座り施術中心) |
| 残業・拘束時間 | 長くなりやすい(閉店後の練習など) | 比較的短い(練習時間を勤務内で確保) |
| プライベートとの両立 | アシスタント時代は難しいケースも | 予約を調節すれば比較的しやすい |
美容師は“店舗全体で動くチームワーク型”の職場が多く、営業時間外の練習・撮影なども日常的です。
一方、アイリストは指名予約制のサロンが多く、勤務時間や休日が安定しやすい傾向にあります。
・「人と話すのが好き」「仲間と切磋琢磨したい」タイプなら美容師
・「黙々と集中したい」「生活リズムを整えたい」タイプならアイリスト
の働き方に魅力を感じるでしょう。
【関連記事】美容師の休日に関する疑問を解説!定休日や年間休暇、休日の過ごし方などまとめてみた
美容師とアイリストのメリット・デメリット
美容師とアイリスト、それぞれの仕事には向き・不向きがあります。
代表的なメリット・デメリットを整理してみましょう。
| 美容師 | アイリスト | |
| メリット | ・幅広い技術を横断的に磨ける
・顧客のライフタイムバリューが高い ・キャリアの選択肢が多彩 |
・体力負担が比較的少ない
・デビューが早い |
| デメリット | ・体力・拘束時間の負荷が大きい
・デビューまで時間がかかる |
・高度な集中力と安定した手技が不可欠
・客単価アップが難しい ・リピート率が比較的低い |
美容師として働くメリット①.幅広い技術を横断的に磨ける
美容師は、カットによる造形技術、カラーやパーマによる色彩・質感の変化技術、そしてシャンプー・トリートメントによるヘアケアの専門知識まで、頭部全体に関わる非常に幅広い技術を横断的に習得できます。
これにより、お客様の骨格やライフスタイル、トレンドを考慮したトータルなヘアデザインを設計する能力が身につきます。
表現の自由度が高く、常に変化するトレンドを捉える感性とそれを再現する技術力の両方を鍛えられるのが大きな強みです。
また、これらの多様なスキルは、後に技術講師や雑誌・広告の撮影、大規模なコンテスト出場など、サロンワークを飛び越えた多岐にわたるキャリアパスを可能にします。
美容師として働くメリット②.顧客のライフタイムバリューが高い
髪の毛は平均して月に1cm以上伸びるため、ヘアカットは3週間から2ヶ月に一度の「必須のメンテナンス」となります。
さらに、季節の変わり目やイベント時にはカラーやパーマの需要も発生するため、お客様との接点が継続的に続きます。
カットに加えて複数の高単価メニューを複合的に提案しやすく、施術を通じて信頼関係を構築できれば、お客様の生涯を通じて安定した収益(ライフタイムバリュー/LTV:顧客生涯価値)をもたらしてくれます。
一度ファンになっていただいたお客様は、家族や友人を紹介してくれることも多く、安定した指名客(リピーター)を獲得できる=長く活躍できる基盤となります。
美容師として働くメリット③.キャリアの選択肢が多彩
美容師の資格は応用範囲が広く、キャリアの選択肢が非常に豊富です。
技術を極めてトップスタイリストになった後も、現場のリーダーである店長、複数店舗を統括するエリアマネージャーといった管理職への道があります。
また、自身の理想を追求するために自己資金で独立開業するケースも多く見られます。
さらに、サロンワークから離れ、技術を教える教育・講師業、介護施設や在宅での訪問美容、ファッション業界でのヘアメイクアップアーティストなど、自身の得意な領域や関心に合わせて、多角的なキャリアプランを柔軟に描くことができます。
美容師として働くデメリット①.体力・拘束時間の負荷が大きい
美容師の仕事は、一日中立ちっぱなしであることに加え、シャンプー、ブロー、カラー塗布などの作業で全身を使うため、肉体的負担が非常に高くなります。
腰痛や腱鞘炎といった職業病に悩む方も少なくありません。
特に土日祝日や年末年始などの繁忙期は、長時間労働が常態化しがちです。
また、お客様の満足度を上げるための技術力向上は欠かせず、営業時間後に自主的なトレーニングや練習会が必須となります。
そのため、プライベートの時間が犠牲になりやすく、仕事と私生活のバランス(ワークライフバランス)を維持するのが難しいと感じる方も多くいます。
【関連記事】美容師の三大職業病「手荒れ・腰痛・腱鞘炎」の原因と対処法は?その他の症状や労災についても解説
美容師として働くデメリット②.デビューまで時間がかかる
美容師の技術は多岐にわたるため、専門学校卒業後にアシスタントとしてサロンに入社してから全てのスキルやサロンワークを習得し、一人前のスタイリストとしてデビューするまでに一般的に2〜3年、長い場合は4年程度の時間を要します。
このアシスタント期間は、技術習得に専念する一方で、お客様への施術時間が限られるため、収入が伸びづらい傾向にあります。
技術習得の道のりが長いうえ収入も低い時期が続くため、「本当にデビューできるのか」という不安から途中でモチベーションを保ち続けることが難しくなり、離職してしまうケースも少なくありません。
【関連記事】美容師のスタイリストとは?仕事内容や給料、デビューまでの期間や道のりを解説!
アイリストとして働くメリット①.体力負担が比較的少ない
アイリストの施術は、座ったままの姿勢で行うものが中心であり、美容師のような長時間の立ち仕事や、お客様の頭を支えるといった肉体的な重労働がほとんどありません。
そのため、腰や足への負担が少なく、比較的体力を温存しやすい職種と言えます。
さらに、多くのアイラッシュサロンは完全予約制を採用しており、メニューごとの施術時間が比較的明確に設定されているため、残業が発生しにくい傾向にあります。
これにより、勤務時間のコントロールがしやすく、終業後のプライベートの時間を確保しやすいため、育児や趣味などと両立しやすい柔軟な働き方を選べる点が大きなメリットです。
アイリストとして働くメリット②.デビューが早い
アイラッシュの技術は、まつげエクステの太さ・長さ・カールや、まつげパーマのロッド設計など、美容師と比較して習得すべきスキルの要素やメニューが標準化され、絞られています。
このため、専門学校卒業後や未経験からの研修であっても、比較的短期間で技術を習得し、スタイリスト(アイリスト)としてデビューすることが可能です。
練習の成果がお客様の仕上がりや施術時間の短縮という形で目に見えやすく、技術の積み上げがすぐに指名獲得や収入アップに直結しやすいという特徴があります。
ヘアスタイルのような急激なトレンド変化が少ないことも、基礎スキルアップに集中しやすい要因となり、早期に安定した指名を築きやすい傾向にあります。
アイリストとして働くデメリット①.高度な集中力と安定した手技が不可欠
アイリストは、お客様の目元という非常にデリケートで微細な部位に対して、グルーやツイーザーを用いてミリ単位の作業を行います。
ゆえに、わずかな手のブレやグルーの塗布ミスが、仕上がりの美しさだけでなく、目元の安全性やアレルギーといった重大な問題に直結します。
面積の広い髪型全体を扱う美容師と比較して、施術中は高い集中力と小さな道具を扱う器用さ、そして長時間の施術でも崩れない安定した手技が求められます。
さらに、お客様の目を守るためのアイケアやアレルギー対応に関する深い専門知識、そして器具の消毒・管理といった徹底した衛生管理も欠かすことができない専門職です。
アイリストとして働くデメリット②.客単価アップが難しい
施術領域が“目元”に限定されるぶん、客単価の天井が低いサロンも少なくありません。
回転率と満足度を両立する設計(セット提案・リペア導線・ホームケア販売・会員制・指名料・アイシャンプーなどのオプションなど)が必要です。
アイラッシュの施術領域は「目元」という限定された範囲になるため、一人の顧客に対して提案できるメニューの幅に限界があり、客単価の天井が低いサロンが少なくありません。
そのため、高い売上を安定的に上げるためには、ただ技術を提供するだけでなく、
・施術時間と単価のバランスを考慮したリペア(付け足し)へのスムーズな誘導
・サロン専売のホームケア商品の販売
・指名料の設定
・アイシャンプーなどの単価を上げるオプション提案
・顧客ロイヤルティを高める会員制の導入
など、施術の回転率・価格と顧客満足度を両立させる複合的なアプローチが求められます。
アイリストとして働くデメリット③.リピート率が比較的低い
美容室でのヘアカットやカラーが、髪の毛が日々伸びるという生理現象に伴い、メンテナンスとして定期的な来店が必須=「必需品」であるのに対し、アイラッシュは美しさを高めるため、つまり「贅沢品・嗜好品」としての側面が強いです。
そのため、以下のような状況や心理の変化により、再来店の優先度が下がりやすいと言えます。
・経済的な要因:給与や支出状況により、「まずは節約する対象」と見なされやすい傾向があります。
・イベント性・必要度の変化:結婚式や旅行などの特定のイベント前には需要が高まりますが、それが終わると「しばらくはなくてもいいか」と必要性を感じなくなり、来店が途絶えやすいです。
・他のサロンとの比較のしやすさ:アイラッシュはヘアに比べて仕上がりに差が出にくいため、価格第一でサロンを選ぶお客様も。ホットペッパービューティーなどのクーポン利用で、「初回限定の低価格」を求めて複数のサロンを転々とする人の割合が高くなりやすいです。
アイリストは技術や接客で「この人に任せたい」という信頼関係を築き、「通い続けるメリット」を伝える努力が、美容師以上に重要になると言えます。
美容師とアイリストの収入・キャリアの違い
美容師とアイリストはどちらも美容師免許を活かして働ける職業ですが、収入の構造やキャリアの伸ばし方には明確な違いがあります。
それぞれの年収相場と、収入を伸ばしていくための考え方を見ていきましょう。
美容師の平均年収と収入の構造
美容師の平均年収は、約300万〜450万円が目安となるでしょう。
ただし、美容師の年収は勤続年数や役職による差が大きいのが特徴です。
| ポジション | 想定年収の目安 | 特徴 |
| アシスタント | 200万〜280万円 | 練習期間中/固定給+残業代中心 |
| スタイリスト | 300万〜500万円 | 技術売上・指名数に応じて歩合が加算 |
| トップスタイリスト | 450万〜700万円 | 指名単価アップ/客層固定で安定 |
| 店長・マネージャー | 600万〜800万円 | 管理職手当や店舗インセンティブを含む |
| 独立オーナー | 800万〜1000万円超 | 売上・経営力により上限なし |
美容師の収入は「固定給+歩合給」で構成されるケースが多く、売上が伸びるほど歩合率も上がります。
つまり、指名顧客をどれだけ増やせるかが収入アップのカギになります。
また、カット・カラー・トリートメントなどの複合的な提案を通じて、1人あたりの単価を上げる工夫も重要です。
さらに、撮影会やSNS集客、セミナー講師などサロン外での活動が増えると、個人のブランドとしての価値が高まり、フリーランスや独立時により高収益を狙うことも可能です。
アイリストの平均年収と収入の構造
アイリストの平均年収は約280万〜450万円が目安になります。
デビュー初期は20万前後の月収からスタートしますが、指名顧客が増えるにつれて歩合給が加算されます。
| ポジション | 想定年収の目安 | 特徴 |
| ジュニアアイリスト | 240万〜300万円 | 練習・モデル施術期間を含む |
| 正規アイリスト | 320万〜450万円 | 指名・リピートによって歩合加算 |
| チーフ・店長クラス | 450万〜600万円 | 売上・管理手当・教育係などを兼任 |
| 独立・フリーランス | 600万〜1000万円超 | 個室サロン・マンションサロンなどで活躍 |
指名制が多くメニューも比較的固定されているアイリストは、特に「時間あたりの生産性」と「予約効率の良さ」が収入を左右します。
リピート率の高いサロンでは、固定顧客を安定的に抱えられる=収入が安定しやすい点も魅力です。
また、アイブロウリスト(眉スタイリング)を兼任したり、化粧品販売やSNSマーケティングを活かして副収入を得たりする人も増えています。
施術の幅が広がるほど、単価・収入ともに上がりやすい職種といえるでしょう。
キャリアチェンジする場合の注意点
「美容師としてやってきたけど、アイリストとしての専門性を高めたい」
「アイリストとしてやってきたけど、美容師として技術の幅を広げたい」
このようなキャリアチェンジを考えている方もいるかもしれません。
どちらも美容師免許を必要とする職種である点が共通しているので、転向は可能ですが、下記の点には注意が必要です。
美容師からアイリストに転向する場合
美容師からアイリストへ転職する人は年々増加しています。
理由としては、体力的負担の軽減や勤務時間の安定などが挙げられます。
ただし、現場では「同じ美容業でもまったく別ジャンル」と言われることも多いです。
まつげや眉は髪とは異なり、ミリ単位の繊細な施術。
ツイーザーの持ち方、衛生管理、アレルギー対応などを一から学ぶ必要があります。
【ポイント】
・「アイリスト技術研修」があるサロンを選ぶ
・美容師時代の“スピード感”よりも目元の安全を最優先にする
・まつげや眉の毛周期・素材知識を習得し、ケア提案までできると強みになる
美容師としての経験(接客力・提案力)は大きな武器になります。
アイリスト業務は静かな施術が多いですが、施術前後のカウンセリングでその経験を発揮できるでしょう。
アイリストから美容師に転向する場合
逆に、アイリストから美容師へ戻る人もいます。
美容師免許があれば、ヘア+アイラッシュ+アイブロウの複合サロンでの勤務も可能です。
両方の技術を活かす「トータルビューティーアーティスト」として働く選択肢も、近年注目を集めています。
ただし、美容専門学校卒業後の期間が空いている場合は、ヘアの基礎技術(シャンプー・カット・薬剤知識)を再習得する必要があります。
特にカット技術は練習時間が多く、再デビューまで1〜2年かかることもあります。
【ポイント】
・復帰サポート制度のある美容室を選ぶこと(再教育カリキュラムや時短勤務など)
・まずはヘアケアやトリートメント業務から再スタートするのも有効
・SNS発信や既存の顧客コミュニティを活かし、集客をスムーズに再構築
まとめ
美容師もアイリストも、お客様を美しく導くためのプロフェッショナル。
どちらの道が正解ということはなく、求められるスキルと得られるやりがいの方向性が異なります。
最近では「ヘア+アイラッシュ+ネイル」を1人で手がけるトータルビューティー型サロンも増加中です。
美容師としてのキャリアをベースに、アイリストとして専門性を磨くことも、両立することもできます。
大切なのは、自分の強みを理解し、それを活かせる環境を選ぶこと。
理想の働き方に応じてキャリアプランを見つめ直してみてください。
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