看護師・保育士・弁護士などの資格を取得するためには国家試験に合格する必要があります。
美容師も同様に国家資格に認定されているため、国家試験を受験しなければなりません。
そしてその項目には『実技試験・筆記試験』があり、それぞれの合格点を取らなければ美容師の資格を取得することができません。
こちらでは美容師国家試験の『実技試験』について、カットやワインディングについての審査ポイント、本番までの対策についてご紹介します。
美容師国家試験・実技試験の種類
美容師国試の実技試験には『カット・ワインディング』の技術があり、どちらも美容業においてとても重要な技術になります。
試験を受ける年によっては概要が異なる場合があるので、常に最新の情報を確認するようにしましょう。
こちらの概要は令和3年5月改訂版をもとに作成しています。
それでは、それぞれの技術のポイントなどを解説していきます。
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第一課題のカット
美容師の技術の中で最も重要なカットは、どんな切り方でも基本とされるレイヤーのスタイルで審査が行われます。
カットの技術だけでなく、衛生面での審査も厳しくチェックされているので常に自分の周りにも注意しながら試験に挑みましょう。
【カットの実技試験に必要なもの】
- カットウィッグ(国家試験用)
- シザー
- コーム
- 器具皿
- スプレイヤー
- 作業衣(白)
- ダッカール類
- その他(ゴミ袋・タオルなど)
指定されている色などにも注意し、髪の毛などがついていないキレイなものを準備しましょう。
そしてシザーは使い慣れたものを使用するので、試験前にはキレイに掃除しておき最終チェックを忘れずに。
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第二課題のワインディング
ワインディングの技術は、美容室で仕事をする上でパーマに必要な技術です。
こちらも仕上がりが左右対象であることやキレイさなどに加え、早く・正確に行うこと、衛生面も審査対象となります。
自分が使いやすいように用具の配置をあらかじめ決めておき、指定の本数で全体のバランスや時間配分などをしっかりと決めておくといいでしょう。
【ワインディングの実技試験で必要なもの】
- ワインディング用ウィッグ(国家試験用)
- ロッド(少し多めを準備する)
- ペーパー
- ゴム
- コーム
- タオルなど
ワインディングのロッドは、万が一ロッドを落としてしまったときのために指定の本数よりも多めに持っておくと安心です。
試験中はいろいろなことを想定し、どんな状況になっても落ち着いて対処することが大切です。
カット・ワインディングの合格基準は?
国試の実技試験は、加点ではなく減点方式で採点が行われます。
第一課題であるカット、そして第二課題のワインディングそれぞれが30点以上の減点、そして衛生面で減点が20点以上になると不合格となります。
採点の内容には技術以外に、衛生面での審査も基準に入っているので指定の作業衣・髪型・色・爪の長さなど自分の身だしなみなどにも注意が必要です。
そして試験の用具に関してもとても厳しく採点されているので、カット中に指を切ってしまったときの対処法なども、試験前に再度確認しておきましょう。
また、その年により採点基準の細かい変更等もある可能性があるので、常に最新の情報を確認しましょう。
国家試験カットの練習方法は?
基本的に実技の練習はウィッグを使って何度も練習することが大切です。
国家試験用のウィッグは、通常のウィッグに比べて金額も高いので練習用の安めのウィッグを使いましょう。
そして、初めのうちは回数を重ねて自分の感覚を掴むことも大切です。
国試の課題となっているレイヤースタイルを体に覚えさせる感覚で、何度も見直しましょう。
練習中に気をつけることは、仕上がりだけではありません。
- 手の角度
- 立ち位置
- コーミングの回数
- ダッカールを止める位置
- 全体のバランス
このような部分も意識しながら練習を行うといいでしょう。
しかしウィッグには長さにも限界があり、お金もかかるので現実的に限られてしまうことも事実です。
ウィッグを使わない練習方法として、YouTubeでイメージトレーニングをすることもできます。
自分がいつも失敗してしまう部分、うまくいかない部分を何度も見返し、何が違うのか、どう切っているのか、など細かい部分までしっかりとみてみると違いが見えてくるでしょう。
また、シザーの開閉を安定して動かすこと、ブロッキングの仕方、コーミングの角度など、カットしなくても見直すことはできます。無駄な動きで時間ロスをしないように、スムーズに進むように動きの確認をしましょう。
実技試験・カットの審査ポイント
国試・カットの実技試験は20分間あり、その中で規定の長さまでカットし仕上げまで行います。
そして審査ポイントには、仕上がりだけでなく準備段階から審査は始まります。
それでは審査ポイントを一つ一つ解説していきます。
- 準備時間(7分間)
モデルウィッグが規格適合状況(標準仕様適合シール貼付の有無)、モデルウィッグに対する禁止行為(毛髪が一部カットされている・目安となるものがあるなど)、カットで使用する全ての用具の品目、数量・規格適合状況(数量が不足していないか・規格に適合しているかなど)についての審査が行われます。
- 仕上がりの状態
明らかなな切り残しがある、モデルウィッグの顔面に切った毛髪や水滴がついた状態、ダッカールがついている、このような状態の場合は減点対象となります。
- 毛髪の長さ
フロントの長さが6㎝・もみあげ10㎝・ネープ10㎝という規定の長さから2㎝以上長い、もしくは不足になっている場合は減点対象。
明らかに長さが許容範囲を超えていると思われる場合に、測定され減点となるので規定の長さをきちんと守りカットすることが重要です。
- ヘムラインのつながり
ヘムラインとは裾の縁側を指し、ラインのつながりや歪みなどを審査します。
またヘムラインに長い毛や、2㎝以上の段差が見つかった場合減点対象となります。
留意事項としてイヤーツーイヤーパートで分けた顔面側をフロント、後頭部側をネープとすることが記載されているので対策として意識しておきましょう。
- カットラインのつながり
全体のカットラインの繋がりやラインから出た長い髪などがないかを審査されます。
またフロントからネープ、トップからサイドなどの範囲に2㎝以上の段差がある場合は減点となります。
パネル幅は約2㎝、中心が地肌から90°となるように引き出すことが留意点として記載されているので、角度や長さを確認しながら進めましょう。
- 左右シンメトリー
全体の仕上がりと、サイド・バックサイドが左右シンメトリーであることもしっかりと審査されます。
パネル幅は約2㎝、中心が地肌から90°に引き出すこと、サイドとバックサイドのパネルはハチ周りまでと記載されているのでこちらもしっかりと確認が必要です。
実技試験・ワインディングの審査ポイント
国試のワインディングの審査には、規定の時間内に収めること・規定の本数を巻くこと・ロッドの配分などを考えながら進めていきます。
またこちらでも衛生面・用具の条件も審査基準になりますのでしっかりと確認し、準備しましょう。
また用具に関しては、いつも使っているもの、使い慣れているものを使用することがおすすめです。
- 準備時間(7分間)
ワインシング技術で使用する用具の品目・数量が不足している場合、規定範囲のもの以外を使用している・または机上に出ている場合は減点となります。
- 作業終了後の処置状況(1分間)
ワインディングの試験終了後の処置状況についても厳しい審査がありますので、実技試験を終えたら終了ではありません。
ワインディングのモデルウィッグの顔面の拭き取りが不十分、顔や首に毛髪・水滴がついている場合は減点対象です。
最終確認をしっかりと行い、キレイな状態で終えるようにしましょう。
- 仕上がり状態
全体的に巻き残しやゴムがしっかりとかけられていないロッドがあった場合は減点となってしまいます。
そのような箇所が見受けられると未完成であると判断されてしまいます。
毛束が残っていないか、ゴムが緩んでいないか、など細かくチェックしながら進めていきましょう。
- ロッドの種類と配列
巻き始めやショートロッドの有無などを審査します。
センターに使用されたロッドが3種類以下、サイドに使用されているロッドが1種類、巻き初めからネープにかけて太いロッドからショートロッドへ順に巻かれていないなどが見受けられた場合は、減点となります。
- ロッドの方向性・ステム角度
フロント・ネープ・バックサイドのロッドの方向性・ステム角度が合っていないと収まりが悪くなります。
頭の形に沿った巻き納めができているか、規定の本数を条件通りに巻かれているかを審査されるので、対策として練習段階から意識していきましょう。
左右シンメトリーになっていない場合も減点となってしまいますので、初めに巻いたロッドに合わせて対処することが大切です。
- ゴムの掛け方・ロッドの巻納め状態
ゴムの掛け方はロッド1本に対して「ゴム1本1重にかけること」が規定となっています。
クロスがけにしてしまったり、ゴムが2重になってしまった場合は減点です。
また巻かれたロッドから毛髪が出ている、表面に毛髪が浮いている部分がある、ロッドが浮いているものが半数以上見られる場合は減点となります。
全体の巻き納め・ゴムの掛け方など基本的なことになりますが、練習中からしっかりと意識することが大切です。
まとめ
美容師の国家試験は実技試験・筆記試験の2つが合格基準に達していないと、美容師免許は取得できません。
実技試験であるカット・ワインディングは、美容業では必要不可欠な技術なので、基礎をしっかりと習得しておくと、仕事でも活かすことができます。
「国家試験だけの課題」と思わずに、何度も練習を重ねることが大切です。
また国家試験対策として審査ポイントをしっかりと把握し、本番を想定した練習を重ね、自信を持って試験に挑みましょう。
いつも通り、成功した仕上がりを想像し、美容師になった自分を思い描きながら試験に挑んでください。
また、別の記事では美容師国家試験の『学科試験対策』として、勉強法や過去問を紹介した記事もご用意しております。
こちらも合わせてご覧いただき、美容師試験への対策を行ってください。
関連記事:【2020年版】美容師・理容師の国家試験について|過去問から試験内容までまとめ