美容師を含む接客業において、お客様からのクレームは避けては通れません。
自分の施術や接客でお客様の不満が募り、クレームに繋がってしまうと、落ち込んだり美容師を辞めたくなったりすることもあるでしょう。
しかし、言いがかりのような理不尽なクレームを除き、通常のクレームは美容師として成長するチャンスです。
お叱りを受けた内容を真摯に受け止め、丁寧に対応することで、今後もリピーターとして長く通っていただける可能性が高まります。
本記事では、美容師が受けやすい代表的なクレーム事例やクレームの回避方法、クレーム発生時の対処法を解説します。
美容師に寄せられるクレームの例
美容師がお客様から受けるクレームは、主に次の3つに分かれます。
1.カットやカラーのミスなど技術面でのクレーム
2.会話や待ち時間など接客面でのクレーム
3.金額や所持品の破損など施術後のクレーム
具体的にどのような内容を指摘されるのか、事例をいくつか紹介します。
切りすぎ
美容師が受けるクレームの中で最も多いのは「髪を短くカットしすぎ」「量を減らしすぎ」というご指摘です。
「長すぎる」や「重すぎる」だと切り直せばいいだけなので問題ありませんが、切りすぎると元に戻すことができないためクレームにつながります。
特に、新米美容師だとウィッグと感覚が違うことから、希望よりも切りすぎてしまったり、左右の長さがチグハグになったりするケースも。
お客様にこまめに確認しながら少しずつ丁寧にカットしていきましょう。
すきばさみで毛量を調節する際も、一気に減らしすぎないように気をつけてください。
ヘアカラーの色が注文と違う
カットと並んで多いクレームが、ヘアカラーに関する内容です。
「希望より明るすぎるor暗すぎる」「染まり方に色ムラがある」「すぐにカラーが落ちてしまった」など、さまざまな理由があります。
ヘアカラーの仕上がりは、同じカラー剤でもお客様の髪質や元の髪色によって異なるものです。
カラーチャート(色見本)や参考写真などを見せながら、仕上がりの色味や色の抜け方について事前にしっかりと説明しておく必要があります。
パーマが強すぎるor弱すぎる
パーマおよびストレートパーマの失敗も、よくあるクレームのひとつです。
「ウェーブが強すぎるor弱すぎる」「ストレートパーマを当てたのにクセが残っている」など仕上がりに関するものと、「パーマ後に髪がチリチリになった」などダメージに関するものがあります。
前者に関しては薬剤の放置時間やアイロンの使い方が適切ではなかったか、事前のカウンセリングが不十分であったことが原因として考えられます。
後者に関しては、お客様の髪の状態を把握したうえで髪にかかる負担について説明しておくことが大切です。
仕上がりがオーダーと違う
「最初に見せた写真どおりにならなかった」「似合わない髪型にされた」「小顔カットでお願いしたのになっていない」など、お客様の希望と仕上がりが一致しなかった結果、クレームにつながることもあります。
先述のカット・カラー・パーマなどのクレームと違い、イメージのズレは抽象的・主観的なケースが多く、対応が難しいです。
カウンセリングの時点でオーダーを具体的に聞き出し、対応の可能なオーダーと不可能なオーダーを伝えておく必要があります。
接客態度が悪い
施術のミスだけでなく、接客態度の不手際がクレームにつながる場合も。
- マナーの悪さ:「タメ口や言葉遣いが気になる」「挨拶がない」「清潔感がない」など
- 不適切な会話:「自慢話や悪口が多い」「上から目線で欠点を指摘された」など
- 相性によるもの:「喋りすぎ」「話が合わない」など
- その他:「営業がしつこい」「美容師がいいと思うヘアスタイルを押し付けられる」など
基本的なマナーを身につけておくだけでなく、それぞれのお客様が求めている接客スタイルを見極めることも重要です。
施術中の対応はもちろん、来店・退店時の挨拶や電話での受け応えも丁寧に行いましょう。
関連記事:今日から使える美容師のマナーまとめ|接客術や心がけることを解説
待ち時間が長い
予約して来店していただいたお客様に待ち時間が発生した場合、美容師の対応によってはクレームにつながる可能性があります。
まずは、予約の取り方や案内する順番など適切なオペレーションでお待たせしないことが第一です。
そのうえで、他のお客様のメニュー追加などにより待ち時間が発生する場合は、誠実な態度で謝罪をおこない、
- 何時までに退店したいか希望時間を確認する
- こまめに声かけをする
- 新しい飲み物を出す
- 雑誌を取り替える
など、気遣いを忘れないようにしましょう。
想定していた金額よりも高かった
美容室では施術中にメニューの追加やランク変更を行うことがありますよね。
その際、きちんと料金を提示できていなかったり、誤った金額を伝えてしまったりすると、会計時にクレームが発生する場合があります。
金額の認識の違いはお客様側の不満が大きく、サイレントクレーマー※になる可能性も高いです。
※サイレントクレーマー:不満を直接伝えずに利用を辞めてしまうお客様
予約時のメニューから合計金額が変わる場合は、都度お客様に了承を得てください。
所有物が汚損・紛失した
お客様の服にシャワーの水がかかったり、カラー剤やパーマ液で汚れたりすると、クレームになります。
特に、薬剤は洗濯しても汚れが落ちないことが多く、弁償が発生する場合もあるので注意が必要です。
また、お預かりしたバッグやコート、アクセサリーが紛失してしまうようなこともあってはなりません。
貴重品やロッカーの鍵は自分で管理してもらうのが◎
お客様の所有物に関するトラブルは、美容室全体の信用を落としてしまうので、くれぐれも気をつけましょう。
美容師がクレームを防ぐ方法
美容師にとってクレームの発生は落ち込む出来事ですが、お客様にとっても同じです。
ちょっとした配慮や意識で回避できることもあります。
続いては、クレームが発生しないように事前に対処できることを解説します。
技術力や接客スキルの向上と合わせて、次のポイントも押さえておきましょう。
カウンセリングでのすり合わせ
美容師が受けるクレームの中には、不十分なカウンセリングが原因で発生するものも多いです。
技術面でのクレームはお客様との丁寧なコミュニケーションで防げます。
- カラーやパーマによるダメージなど、施術のマイナス面も伝える
- 色落ちや毛先のハネなど起こりうるリスクを説明する
- 言葉だけでなく、ヘアカタログやSNSを使って視覚的にイメージを共有する
- 「おまかせ」のお客様でも仕上がりイメージを事前に伝えて了承を得る
- 「ちょっとだけ」などの抽象的な要望は、「3cm」など具体的にする
- 自分の技術を過信せず、無理な要望は対応できない旨を伝える
など、認識のズレが生じないようにカウンセリングを入念に行います。
特に、好みやお悩みを把握しきれていない新規のお客様の場合は、カウンセリングの時間を長めにとりましょう。
施術内容や料金の説明
カウンセリングをしたあとは施術の流れを伝え、カットやトリートメントなど提供するメニューごとに説明を行います。
美容師同士で使うような専門用語はできるだけ避け、誰もが分かる言葉に置き換えて説明しましょう。
各施術にかかる料金や時間の説明も必須です。
施術中は自己判断で進めずに、「今こんな感じになっています」「後ろはここまでカットして大丈夫ですか?」「気になるところはありますか?」など、鏡を見ていただきながらこまめに確認します。
美容師がクレームを受けた時の対応策
実際にクレームを受けたときは、さらなる不満に発展しないように適切かつ早急に対処する必要があります。
美容師にとってはクレームはよくある出来事です。
お客様からの信頼を失わないように、また美容室全体の評判を落とさないように、焦らず次の手順で対応しましょう。
1.上司・責任者への報告
クレームを受けたらすぐにお客様に謝罪し、対応に不手際がないように早急に上司やクレーム対応の責任者に情報共有します。
当事者が対応するよりも、クレーム対応に慣れたスタッフが間に入ることで落ち着いて対処できます。
また、美容室内でクレーム対応のマニュアルが共有されている場合は、あらためて内容を確認しましょう。
2.クレーム内容の聞き取り
次に、施術への不満・不安を抱えているクレーム内容を詳細にヒアリングします。
美容室の評判を落とす内容が他のお客様の耳に入らないように、また声が大きくなる可能性を考慮して、可能であれば別室へご案内するほうがよいでしょう。
お客様が不満を感じられた経緯や理由、今後の希望、懸念事項や今のお気持ちなどを聞き出します。
このとき相手の言葉を遮る、途中で言い訳する、否定するなどの言動はNG。
聞き役に徹し、お客様がストレスを全て吐き出して気持ちを落ち着かせられるようにしてください。
誠実な姿勢で相槌を打ち、お客様の仰られた内容を反復する、メモを取るなど、共感とお詫びの気持ちを示しながらヒアリングします。
電話でクレームを受けた場合は、「お電話越しで恐れ入りますが」と前置きをした上で謝罪と聞き取りを行います。
忙しくても「担当者から後ほど電話します」など、たらい回しにすることのないように気をつけましょう。
3.謝罪と経緯の説明
ひと通りのヒアリングが終わったら、もう一度謝罪を行います。
感情がこもっていない謝罪や平謝りだと、さらなるクレームにつながるため要注意。
お客様の心情や具体的なクレーム内容を踏まえ、「◯◯なところ◯◯してしまい、大変申し訳ございません。」と具体的にお詫びすることが大切です。
美容室側に非がない場合でも、まずは気分を害してしまったことに対して謝りましょう。
謝罪に続いて、なぜクレームにつながる状況が発生してしまったのか、経緯・理由を説明します。
今回のミスの原因や施術過程での失敗、提供した施術の内容など、事実のみを正確に伝えます。
自分を正当化する発言や言い訳じみた説明を行わないように気をつけてください。
4.返金ややり直しなどの対応
謝罪後は、基本的にはお客様のご要望を受け入れる姿勢で、お客様の状態を見てクレームの解決策を提示します。
例えば、ヘアスタイルの仕上がりに関するクレームの場合、「返金する」「状態が良くなるまで無償で施術を提供する」などの対応になるでしょう。
お客様の所有物を薬剤で汚損してしまった場合は、「クリーニング代を負担する」「お預かりしてクリーニングする」「同じ品物を弁償してお渡しする」などの対応になるかと思われます。
美容室側で費用を負担する場合は、領収書や診断書をもらうこと、トラブル発生箇所の写真を残しておくことをおすすめします。
どの範囲まで対応できるのか?は美容室や保険の加入状況によって異なりますが、できること・できないことを主張し、納得していただく必要があります。
5.改善・対策準備
今回のクレームに対するお客様への解決策を提示したら、今後美容室全体で再発防止できるような方法を検討します。
クレームを受けたときは原因を分析して予防策や発生時の対応をマニュアル化し、同じ失敗を繰り返さないことが大切です。
お客様には「ご指摘いただいた内容はスタッフひとりひとりに共有し、再度同じトラブルが発生しないように教育を行います。ご指摘をいただきありがとうございました。」など、改善案と感謝の気持ちを伝えるといいでしょう。
過剰なクレームにはどう対応する?
美容師が受けるクレームの中には、まれに理不尽な内容もあります。
・ミスに対する要求が大きすぎる
・何度もクレームを入れ続ける
・脅すような言い方をする
・話している内容に矛盾がある
このような悪質なクレーマーに対しては、焦らずに毅然とした態度で対応する必要があります。
クレーム内容とお客様の個人情報を把握してメモに残し、美容師側の落ち度に応じた謝罪を行いましょう。
返金や大幅な割引など過大な要求にはすぐに結論を出さず、上司や責任者と共に対応します。
恐喝など違法行為に発展した場合は、会話の録音や警察への通報も検討が必要です。
まとめ
お客様の髪に直接触れ、接客する時間の長い美容師という職業には、クレームが付きもの。
トラブルが起こらないようにスキルアップや丁寧なコミュニケーションを心がけると同時に、クレーム発生後も落ち着いて対処することが大切です。
誠意を持って謝罪したあとは、受けたクレームを反省して今後の仕事に活かせるようにしましょう。
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