美容室におけるカルテの役割とは?美容師が書くべき項目や集客力をアップする書き方を解説

美容室の必須アイテムといえば、カルテ。
その内容や書き方、活用方法によって顧客満足度やリピート率にも影響することをご存知でしょうか。
お客様の情報を記録するカルテは、単なる顧客管理ツールではなく、提供するサービスの内容や信頼関係の構築にも役立つ有効なツールです。
お客様に「次もこのサロンに行きたい」「またこの美容師にお願いしたい」と思ってもらうためには、カルテの活用がカギになります。
本記事では、美容師が知っておきたいカルテの概要や作成するメリット、書くべき内容やコツなどを解説します。

美容室における「カルテ」とは

美容室・ヘアサロンにおける「カルテ」とは、来店されたお客様の個人情報やニーズ、施術履歴などのデータを記録したものです。
顧客ひとりひとりに対して作成し、来店のたびに情報を更新します。
カルテにまとめられたデータは、サロンのスタッフ間での情報共有や施術提供に活用するための重要な情報です。
お客様自身に記入してもらったカウンセリングシートの情報に加え、美容師がカウンセリングや接客を通じて得た情報も書き加えます。

カルテを管理する2つの方法

①紙
ワードやエクセルなどのツールで作成したカルテをプリントアウトし、情報を直接書き込んだものをファイリングして管理する方法です。
各サロンごとにカルテの項目を自由に作成できます。インターネット上でカルテのテンプレートをダウンロードして印刷してもOKです。
ただし、紙のカルテはお客様の数が増えるほど書類が増え、保管の場所や手間が必要になります。
そのため近年ではペーパーレス化が進み、アプリやシステム上にデータを保存する「電子カルテ」としてデジタルで管理するサロンも増えています。

②電子カルテ
美容室に特化した顧客管理アプリやカルテアプリ、予約システムなどで管理する方法です。
スマホやタブレットで入力できるので、文章だけでなく写真とともに記録できるものもあります。
無料で使えるものから、より機能を充実させた有料のものまでさまざま。
なかには、売上データやメニュー比率のレポート機能や、予約システムと連携できる機能があるアプリも存在します。
予約システム連携型の場合、お客様がオンライン予約時に入力した情報をそのままカルテに反映させられるので、来店時のカルテ入力の手間を省けます。

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カルテの分類方法

電子カルテだと顧客情報を名前や最終来店日などの要素で並べ替えられたり、キーワードで検索したりして、特定のお客様のカルテを容易に探し出すことができます。
紙のカルテの場合は、分類方法にひと工夫が必要です。
一般的にはお客様の名前の50音順、またはカルテを作成した順番で保管しているサロンが多いでしょう。
しかし上記の方法だと、定期的に来店してくれるリピーター(固定客)とそうでないお客様のカルテが混在してしまい、探す手間がかかってしまいます。
そこでおすすめなのが、来店頻度ごとにグループ分けする方法です。
頻繁に来店してくれるお客様のグループ、1年ほど来店していないグループ、2年以上、3年以上……と分類することで、カルテを見直しやすくなりますよ。

美容師がカルテを作るメリット

お客様ごとにさまざまな情報を蓄積していくカルテは、美容室での顧客管理に欠かせないものです。
まずは、カルテを作成・管理するメリットや役割を確認しておきましょう。

顧客ニーズに沿ったサービス提供

カルテを作る第一の目的は、お客様の要望や悩み、髪質や好みなどを把握して、ニーズに合う美容サービスを提供することです。
お客様によって似合うヘアスタイルや理想のヘアスタイルはさまざま。
また、施術内容が同じでもその方の髪質や体質、ライフスタイルによって異なる仕上がりになるでしょう。
お客様の情報がまとまったカルテがあれば、都度それらの情報を確認して顧客ひとりひとりに合わせたサービスを提供できます。
そのためには、正確かつ詳細にカルテを作成することが大切です。

スムーズな顧客対応・コミュニケーション

より深く、より円滑なコミュニケーションを取れるようになる点もカルテ作成のメリットです。
カルテには髪質や要望といった基本情報や施術記録だけでなく、カウンセリングで聞き出した情報や施術中に気づいたことまで幅広く記録します。
カルテを見れば前回までの情報を確認でき、過去の来店と繋がりのある施術・接客を行えます。
美容師は1日に何人ものお客様を対応しますが、お客様にとっては担当美容師は1人。美容室で話した内容はしっかりと覚えているものです。
そのため、来店するたびに何度も同じことを尋ねられたり言われたりすると、不安や不信感につながってしまいます。
カルテがあれば前回の施術の感想を聞いたり、ニーズにあった別メニューを提案したり、会話のきっかけにしたりとスムーズな顧客対応が可能になります。
お客様に「行きつけのサロン」として特別感を感じてもらうことができ、信頼関係の構築に役立ちます。

スタッフ間の情報共有

お客様の情報をスタッフ間で共有し、スムーズに引き継ぎができる点もカルテ作成のメリットです。
美容室では予約情報によって、いつもの担当者とは違う別のスタッフが対応するケースもあるでしょう。
カット・カラーはスタイリスト、シャンプー・ブローはアシスタントというように、施術ごとに担当者を分けているサロンもあります。
また、スタイリストが休職・退職するケースも少なくありません。
顧客情報をまとめたカルテがあれば、担当美容師が変わっても提供するサービスの質を維持できます。
お客様に同じ質問をしたり、イチから説明をお願いしたりしなくて済みます。
どの美容師が担当しても前のデータを活かしてスムーズな対応ができるサロンは、お客様からの好感度・信頼度が高いです。
顧客満足度が高まり、リピート率の向上にもつながるでしょう。

経営・マーケティングへの活用

カルテの情報をもとにお客様のニーズや傾向を把握し、サービスの改善に役立てることも可能です。

  • 年齢や居住地
  • 来店頻度
  • メニューの傾向
  • サロンへの来店動機
  • よく見るメディアや情報源

これらの情報を分析すれば、「どのメニューを強化すべきなのか?」「どの媒体に広告を出せばいいのか?」といった売上や集客などの経営戦略・マーケティング戦略を練りやすくなります。
狙っていた効果やターゲットと結果にズレがないか、仮説の検証にも役立つでしょう。
美容師にとってカルテは、売上やリピート率を高めるための財産です。

再来店・リピートの促進

カルテに記載された連絡先や施術履歴をもとに、お客様の再来店を促すことも可能です。
前回の施術時期から適切な時期を見計らってキャンペーンを告知したり、誕生日の割引案内を送ったりできます。


・ダイレクトメール(DM)を郵送する
・EメールやSMSでメッセージを送る
・LINEやInstagramなどのSNSで連絡を取る
などの方法があります。

美容室のカルテに記載すべき内容

お客様とのコミュニケーションやマーケティングまで幅広く活用できるカルテ。
ここからは、カルテを最大限活用するために記録すべき内容・項目をご紹介します。

個人情報

カルテに記載すべき基本の項目は、次のようなお客様の個人情報です。

  • 氏名
  • 住所
  • 生年月日・年齢
  • 電話番号
  • メールアドレス
  • 職業

上記の情報は、初回の来店時にお客様自身で記入していただくケースが多いです。
急な連絡が必要になったときのほか、来店のお礼やフォローメール、キャンペーンDMを送るときなどに活用します。
年齢層や居住エリアなどを分析して、メニューやサービス内容に反映する場合もあります。
これらの個人情報はプライバシーポリシーを明記したうえで、取り扱いには十分注意しましょう。

詳しい個人情報を書くことに抵抗のあるお客様もいるため、口頭で補足してあげると安心です。
例えば、個人情報の取り扱い方法について説明したり、「お得なクーポンをお送りしてもよろしければメールアドレスもご記入お願いします」と任意記入であることを伝えたりしましょう。

髪質

お客様の情報の中でも、個人差のある髪質は施術に大きく影響する項目です。
施術前にはカウンセリングを行い、次のような髪質に関する情報をカルテに記録しておきます。

  • 髪のクセ
  • 柔らかさ
  • ダメージ度合い
  • ブリーチや黒染めの履歴

髪質によって、「クセが強いから縮毛矯正がすぐに取れる」「猫っ毛でカラーが入りやすく抜けやすい」などの傾向があります。
カルテに記録した髪質の情報を見ればこれらの傾向を掴むことができ、カラーやパーマなどの薬剤を調整しやすくなります。
また、それぞれの髪質に適したスタイリングやホームケアの方法を適切にアドバイスできるようになるでしょう。
髪質は施術・接客に役立つ重要なデータなのです。

体質

お客様の体質、特に薬剤や物質に対するアレルギーの有無は必ずカルテに記録します。

  • 成分へのアレルギー(アレルゲンを含む薬剤の使用NG)
  • 金属アレルギー(ヘアピンなどの使用NG)
  • ゴムアレルギー(ゴム手袋などの使用NG)

また、「シャンプーの体勢によって気分が悪くなる」「頻繁にお手洗いに行きたくなる」などの体質も記録し、お客様に合わせて柔軟に対応できるようにしましょう。

髪の要望やお悩み

髪の毛・髪型に関するお客様の要望、お悩みもしっかりヒアリングしてカルテに残します。
例えば下記のような内容について、なりたい・してほしいイメージ&なりたくない・してほしくないイメージを合わせてヒアリングしましょう。

  • ヘアスタイル・髪型(毛先は重めが好き、伸ばしている、髪を傷めたくないなど)
  • スタイリング・アレンジ方法(再現しやすい、有名人の真似、手入れが簡単など)
  • 好みのテイスト(フェミニン、キュート、クール、モード、ナチュラルなど)
  • 人からの印象(かわいい、きれい、かっこいい、若々しいなど)
  • コンプレックスや気になること

上記の情報があれば、お客様の来店目的を把握しやすくなり、メニューや店販商品を提案する際の根拠にもなります。
ただし、「やりたい髪型はありますか?」「髪のお悩みはありますか?」と直接聞いてもすぐに答えが浮かばないお客様もいらっしゃいます。
イメージ写真を用意してもらったり、よくあるお悩みを書き出したチェックシートを作ったりと、カウンセリング方法に工夫が必要です。

施術履歴

お客様によっては「前回と同じで」「この間みたいにしてほしい」とオーダーする方もいます。
過去の施術内容を参照できるように、カルテには次の内容を記録しておきましょう。

  • 来店日時
  • 施術前後の髪の状態(可能であれば写真も残す)
  • 提供したメニュー
  • 使用した薬剤
  • 施術の詳細(薬剤を置いた時間、部位別のカットの仕方など)
  • 施術中のお客様の反応や気にかけていたポイント
  • 施術後のお客様の感想や反応
  • アフターカウンセリングで伝えたこと(時間の経過による髪の変化、ホームケアやスタイリングのアドバイス、使用したスタイリング剤)
  • 購入された店販商品
  • 今後の施術方針やデザインの計画
  • 施術中の反省点や悩んだこと

上記の情報は、髪の伸び方やクセの出方といった前回の施術の結果をもとにサービス内容を調整したり、次回来店のタイミングを予測したりする際にも役立ちます。

サロンに対するリクエスト

初回の来店時には、お客様が美容室に求めていることをヒアリングしてカルテに記録します。

  • 美容室に行く理由(理想のヘアスタイルがある、髪の悩みを解決したい、同じ髪型をキープしたいなど)
  • 美容室を変えた理由・きっかけ(美容師との相性、立地、不満に感じたことなど)
  • 美容室を選ぶ基準(料金、メニュー内容、接客、サロンの雰囲気など)
  • 美容室での過ごし方(静かに過ごしたい、楽しく会話したい、アドバイスが欲しいなど)

美容室に対してのニーズを事前に把握することで、接客のミスマッチを防止できます。
例えば、本当は「雑誌を読んで静かに過ごしたい」と思っているお客様にたくさん話しかけてしまったり、価格を重視しているお客様に特別なケアメニューを提案したり。

カルテをもとにお客様に合わせた接客・提案を行いましょう。

ライフスタイルなどの情報

これまで紹介した情報とは別に、接客・会話を通じて得た情報もカルテに書き込んでおくと、コミュニケーションを取りやすくなります。

  • 趣味
  • 職業
  • 家族構成
  • 休日の過ごし方
  • 最近の出来事
  • 服装のテイスト
  • 好きな雑誌
  • 紹介やつながり
  • その他の雑談内容 など

上記を覚えておいて次回もその話題に触れることで、「覚えていてくれたんだ」と信頼度がアップします。
また、「仕事の都合で明るいカラーはできない」「普段は髪をまとめることが多い」「毎日髪を巻いている」「子どもが小さいからヘアケアの時間を取れない」などの情報も役立ちます。

リピート率を上げるカルテ作りの3つのポイント

カルテを作成していたとしても、書き方に問題があればそのメリットを享受することはできません。
最後に、リピート率の向上につながる「良いカルテ」を作るためのポイントをご紹介します。

1.詳細なカウンセリング&観察を行う

カルテの情報にはお客様自身に書いてもらう項目と、美容師がカウンセリングや接客を通して追記していく項目があります。
カウンセリングではカルテの項目を事務的に聞き取るだけでなく、お客様の反応や仕草をよく観察しましょう。
お客様も気づいていない潜在ニーズや上手く言語化できない内容も察してあげることが大切です。

関連記事:美容師向けカウンセリングマニュアル!接客の手順や伝え方のポイントなどを解説

2.些細なことでもメモを残す

先述のとおりカルテを作成する目的は、お客様にあったサービス提供や接客、スタッフ間の情報共有を行うことです。
カルテはどのスタッフが見ても理解できる分かりやすい書き方で、できるだけ詳しく記載してください。
希望のヘアスタイルに近づけるために、またサロンで心地よく過ごしていただくために必要な情報は、些細なことも含めてすべて書き出します。
会話の流れでサラッと発言した提案であっても、お客様は意外と覚えているものです。

同じ質問・提案やニーズに合わない対応をしないように、来店前には必ずカルテを確認しましょう。

3.会話の内容を記録する

美容師がお客様と信頼関係を築くためには、円滑なコミュニケーションが必要不可欠です。
いくら施術内容が良くても、接客がしっくり来ないと満足度は下がってしまいます。
カルテには、一見役に立たないような施術中の何気ない会話までメモしておくことをおすすめします。
何気なく話したことを覚えてくれているとお客様は安心し、結果的にリピートにもつながるからです。

  • 趣味の話題
  • 恋愛トーク
  • 仕事の悩み
  • 家庭の悩み
  • 周りで流行っていること

など、どのような会話をして何が盛り上がったのかを残しておきましょう。
次回以降の来店時にカルテを見れば、「そういえば前回教えていただいた映画見ましたよ!」「前おっしゃってた◯◯、どうでした?」という風に、会話のきっかけ作りに役立てられます。
また、施術後にDMやメッセージを送る際のネタとして使うことも可能です。

まとめ

美容師にとってカルテは、お客様のニーズやお悩みを可視化し、適切な施術や接客を行うための大切なツールのひとつ。
記載する内容や書き方、カウンセリングの方法を工夫して上手く活用できば、お客様の満足度・リピート率を高めることができます。

何度もお願いしたくなる美容師とは、優れた技術があるだけでなく、お客様に合わせたサービスを提供できる人です。
来店時に伝えたことをよく覚えていてくれたり、髪のクセや特徴を把握していたりと、お客様の良き理解者になれる美容師が求められています。
本記事をきっかけにカルテの作り方や使い方を見直して、集客力を向上させましょう。

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