介護美容とは?美容師・メイクアップアーティスト・ネイリスト・エステティシャン必見の新たな働き方

近年注目されている「介護美容」をご存知ですか?

さまざまな理由から自由な外出が難しい方々に対して、美容サービスを届けることを指します。

 

介護美容は外見を美しくするだけでなく、心の健康や生活の質にも寄与し、通常の介護や医療だけではケアしきれない部分をサポートできる、大切な役割を担っています。

高齢者が進むなかで、介護美容を取り入れる施設も増えているのです。

 

本記事では、介護美容が利用者に与えるメリットや業界の今後、具体的な施術の内容や働き方などを解説します。

「介護美容に興味があるけど、どんな内容かよくわからない」「美容業界の働き方のひとつとして知っておきたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

介護美容とは?

 

介護美容とは、介護を必要とする方(高齢者や障がいのある方など)に対して美容施術を提供することです。

ヘアカットやスタイリング、メイク、ネイルケアやエステなどを行うことで見た目を整えると同時に、心の健康にもアプローチします。

 

介護美容による効果

自己肯定感や幸福感の向上

 

介護を必要としている方は外出の機会がどうしても減ってしまうので、身だしなみへの関心も低下気味になります。

身だしなみを整えていない状態だと自信がなくなり、「鏡を見るのが嫌」「他人との交流が面倒」と気持ちが沈みがちに。健康に悪影響を及ぼすケースも少なくありません。

 

そんなときに介護美容を取り入れると、きれいになった自分の姿を見て気持ちが前向きになり、笑顔も増えます。

長期的に続けていれば不安やイライラなどのマイナスな感情が軽減し、自己肯定感や幸福感も高まる効果があるのです。

介護美容をきっかけに髪を整えたり、化粧をしたりする習慣を取り入れることで、自分でできることが増えて活気を取り戻せるでしょう。

 

コミュニケーションの促進

 

施設や自宅にこもりがちな方にとって、介護美容はコミュニケーションを促す手段のひとつです。

身なりを整えることで自信が生まれて他人とのコミュニケーションに前向きな姿勢になれるため、「積極的に外出したくなる」「デイサービスに通うのが楽しくなる」「職員や他の利用者と話しやすくなる」「新しい趣味を始めたくなる」などの効果が期待できます。

 

コミュニケーションが活発になると、程よい緊張感や心地よい刺激を感じられるように。

引きこもりや認知機能の低下を防ぐことにもつながるでしょう。

 

リラックス効果

 

介護美容には心理的なリラックス効果も。

特にエステやマッサージなどは、肌に触れながら施術を行うため、気持ちが落ち着き安心感につながります。

 

リラックス効果により心身の疲労や不安が軽減されると、認知症やうつ傾向、不眠といった精神症状の緩和も期待できるでしょう。

 

身体機能の維持・回復

 

介護美容では美容施術を施すだけでなく、利用者自身でお化粧やネイルなどに挑戦してもらうケースもあります。

この場合、細かい作業を伴うためリハビリ効果が期待でき、身体機能の回復や体力の維持にもつながるでしょう。

 

介護美容の提供場所

介護美容は美容室や美容サロンではなく、要介護者が生活する場所や安心して過ごせる場所(利用者の自宅または介護施設)で提供されます。

老人ホームやデイサービスのような介護施設によっては、理美容専門の部屋を用意しているところもあるようです。

 

美容の中でもヘアカットやヘアセットは原則、美容室・理容室以外でのサービス提供が禁止です。

しかし、高齢や疫病などの理由で美容室・理容室に通うことが難しい方に対しては、例外として任意の場所への出張(訪問理美容)が認められています。

 

介護美容業界の今後

 

超高齢化社会と言われる日本では、2040年には全人口の約35%が65歳以上になると予測されています。

高齢者の割合が増加するなかでさまざまな介護サービスが登場しており、介護美容もそのうちのひとつ。

昨今の状況を鑑みると、介護美容の需要はますます伸びていくと考えられるでしょう。

 

需要増加に伴い、介護美容に特化したサロンや事業所も増加し、介護美容を提供できる人材がますます求められるようになる見込みです。

介護が必要な方のニーズにきめ細やかに対応できるように、介護美容ならではのスキルや知識を身につけておくことをおすすめします。

 

介護美容の主な種類

ひと言で「介護美容」といってもさまざまな種類があります。

  • ヘアケア
  • メイク
  • ネイル
  • エステ・マッサージ など

 

一般的な美容サービスと内容は同じですが、要介護者の方の心身の状態に配慮して施術を行わなければならない点には留意しましょう。

高齢の方や障がいを持っている方とのコミュニケーションの取り方、正しい介助の知識、寝たまま施術を行う方法など介護美容に特化したスキルがあるとより安心です。

 

ヘアケア

 

介護美容における最もメジャーな施術がヘアケアです。

 

  • ヘアカット
  • シャンプー
  • トリートメント
  • カラーリング
  • パーマ
  • ヘアセット
  • ヘッドスパ・頭皮マッサージ

 

などのメニューを提供します。

 

これらのメニューを提供する場合、国家資格である美容師免許が必須です。

介護を必要とする方の自宅や施設に足を運んで施術を行うので、「訪問美容師」「福祉美容師」「介護美容師」などと呼ばれます。

 

一般的な美容師のサロンワークと異なり、「長時間座れない」「姿勢維持ができない」などの個々の状況に応じた柔軟な対応が必要です。

座位を保つことが困難な方や寝たきりの方には、ベッド上で施術を行う場合もあります。

 

関連記事:福祉美容師・介護美容師とは?年収や仕事内容、資格や就職先などを解説

関連記事:介護美容師に必要な資格とは?おすすめの資格7選&費用・受験条件・取得方法まとめ

 

メイク

 

介護美容で行うメイクとしては、次のようなサービスが挙げられます。

 

  • ベースメイク
  • リップメイク
  • アイメイク
  • フルメイク
  • スキンケア

 

メイクは変化がわかりやすいため、美しくなった喜びや心地よさをすぐに感じることができ、明るい気持ちになりやすいです。

美容に無頓着になっていた方にメイクを施すだけで、見違えるように元気になる方もいるほど。

心のケアに効果的であることから「メイクセラピー」や「化粧療法」と呼ばれることもあります。

また、さまざまな色に触れたり、メイクの過程で肌に触れたりすることで脳に程よい刺激が与えられます。

 

メイクは自分でも続けられる美容としても注目されている方法です。

 

ネイル

 

介護美容として行うネイルケアには、次のようなサービスが含まれます。

 

  • マニキュア
  • ペディキュア
  • ネイルケア など

 

爪や手指を美しく整えたり、色をつけたりすることで、前向きな気持ちになれる方も多いです。

コミュニケーションを取ることが難しい方、関節の拘縮や体の麻痺がある方でも、ネイルを施しながら触れ合うことでリラックスしてもらえます。

 

介護美容でネイルを提供するなら、「福祉ネイリスト」など特化した資格を持っていると就職で有利になるでしょう。

 

エステ・マッサージ

 

介護美容には、エステやマッサージのサービスもあります。

 

  • ハンドケア
  • フットケア
  • フェイシャルエステ
  • アロマテラピー など

 

これらの施術は血流が良くなるだけでなく、肌と肌が直接触れ合うことで安心感が生まれ、またコミュニケーションの機会にもなります。

 

アロマオイルを用いる場合は、より深いリラックス効果やストレス軽減効果を期待できます。

オイルを肌に塗布してマッサージしたり、アロマランプで植物の香りを広げたりといった方法です。

アロマは美容やリラクゼーションだけでなく、医療や健康増進のために古くから活用されてきました。

精神的な疲労はもちろん、体の痛みや睡眠の改善にも役立つでしょう。

 

介護美容に関わる仕事を探す方法

介護美容を提供するためには、美容サロンや介護に特化した企業に所属し、依頼のあった施設や医療機関、利用者宅などに出張する方法が一般的です。

介護美容のスタッフとして働ける場所を探す方法としては、「求人サイトで探す」または「就職・転職エージェントを利用する」の主に2パターンがあります。

 

求人情報サイト

 

求人情報サイトとは、企業がさまざまな求人広告を掲載しているWebサイトのこと。

サイト内にキーワードや希望の条件を入れて検索し、気になる求人に応募する仕組みです。

 

職種、勤務地、雇用形態、給与などのこだわりに合う求人を、自分のペースで探せるところが求人情報サイトのメリット。

ただし、サイトによって掲載されている求人情報が異なるため、複数のサイトを利用したほうが理想の勤務先を見つけやすくなります。

 

また、介護美容の仕事を探すなら美容業界や介護業界に強い求人情報サイトの利用がおすすめです。

美容業界専門求人サイト「キレイビズ」はこちら

 

就職・転職エージェント

 

就職・転職エージェントとは、担当のアドバイザーにキャリアの相談を行い、自分に合った仕事を紹介してもらえるサービスです。

職業紹介から応募書類の添削、面接対策、内定後の条件交渉まで幅広いサポートを受けられます。

 

求人情報サイトには載っていないような非公開求人も多く、自力では出会えない企業とマッチングできる可能性アリ。

アドバイザーと二人三脚で就職活動できるので、ひとりだと心細い方にもおすすめです。

 

エージェントを利用する場合も、美容業界や介護業界を得意としている業者を利用しましょう。

 

介護美容を学べるスクール2選

介護美容を行うスタッフには、美容に関する技術・知識だけでなく、高齢者や障害のある方との関わり方を学ぶことも求められます。

就職先の研修制度で学んでから派遣されるケースが多いですが、最近では介護美容について幅広く学べる専門のスクールも。

スクールで学び、資格を取得することで、お客様により安心した施術を提供できるでしょう。

 

ここでは、介護美容を学べるスクールとして「介護美容研究所」と「日本介護美容セラピスト協会」をご紹介します。

 

介護美容研究所

 

介護美容研究所は、2018年7月に誕生した日本初の介護美容スクールです。

東京、横浜、名古屋、大阪、福岡と全国5都市に開校しています。

 

選べるコースは2つ。

  • 訪問美容コース:寝たきりの方へのカット術や自宅・施設での施術フローを学べる。介護資格を取得できる(介護職員初任者研修を修了)。
  • ケアビューティーコース:高齢者向けのメイクセラピー、ネイル、タッチケア、トリートメントなどを学べる。

 

介護美容研究所は、受講生はもちろん卒業生へのサポートの手厚さが魅力。

受講中は現場経験を培うためのボランティア実習やキャリアの個別カウンセリングを受けられます。

また卒業後は、スキル習得のための独自講座を受けられるセカンドスクールや、キャリアチェンジを支える転職サポートなどの案内を受けられる仕組みです。

 

日本介護美容セラピスト協会

 

日本介護美容セラピスト協会は、ビューティタッチセラピストの育成を主な活動としている団体です。

ビューティタッチセラピーとは、メイクやスキンケアなどを通して肌に触れることにより、心身の健康を促す美容療法のこと。

 

“触れるケア”を学ぶ5つのコースが用意されており、受講後はディプロマとライセンスカードが発行されます。

 

  • ハンドセラピー講座:高齢者の皮膚知識や手の構造、指先から肘までのハンドセラピーについて学べる。/1日間・5時間
  • フェイシャルセラピー講座:クレンジング、トリートメント、スキンケア、美肌パック、光セラピーなどを幅広くトレーニングする。/2日間・10時間
  • メイクキュアセラピー講座:明るい顔色作りやリフトアップ術、笑顔に見える口元の描き方などの技術を学べる。/2日間・10時間
  • 総合講座:上記の基本コースのトレーニングを実施し、高齢者向け美容レッスンの開き方を学べる。/1日間・5時間
  • 介護基礎講座:高齢者の心理や病気、福祉用具の扱い方、コミュニケーションの取り方など要介護者と接する際の基礎知識を学べる。/1日間・6時間

 

日本介護美容セラピスト協会はセラピストの育成に加え、施設の支援や地域づくりも積極的に行っています。

 

まとめ

高齢化や美容意識の高まりとともに、ニーズが伸びつつある介護美容。

見た目だけでなく心の安定につながるため、利用者の方の生活の質を上げるお手伝いができる仕事です。

日本において今後ますます需要が高まっていくと考えられています。

 

介護美容では、「体を動かしにくい」「一人で移動できない」「口頭でのコミュニケーションが難しい」などさまざまな状況のお客様に対応します。

そのため、ひとりひとりに合わせた細やかで臨機応変な対応力と技術力が求められるでしょう。

「いつまでもキレイでいたい」「身だしなみを整えて心から元気になりたい」と考えている方々のサポートができる「介護美容」という職業を、キャリアの選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

 

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